3.動物の世界
(5)ハチのなかま
(147)刺さないアシナガバチ
「キャー! ハチ! 助けて!」
「うわあー。本当だ。ハチだ。モンタ博士! あやうし!」
「えっへん。モンタ博士はね,ハチとも仲良くできるんだ。それで,ハチにさされないんだぞ。」
「でも,おしりを曲げて,今にもさそうとしていますよ。」
「そうだよ,モンタ博士! あぶないよ。すぐにハチをポイしたほうがいいよ。」
「二人とも心配してくれて,ありがとうね。でもね,このハチはぜったいにぜったいにささないんだよ。」
「本当ですか。でも,どうしてですか。」
「それはね,このハチはね,針のないオスのハチだからだよ。」
「え! ハチって,さすのはメスだけなんですか。」
「そうなんだよ。そもそもハチの針というのは,産卵管が変化したもので,えものをとるためではなく,自分たちの巣を守るための武器なんだ。」
「ふーん。それで,巣に近づいたりすると,さされるんですね。」
「そうだよ。このハチはね,正しくはキボシアシナガバチという種類だけど,これからの季節,スズメバチなどにも十分に気をつけてくださいね。」
「ところで,オスのハチって言ったけど,メスとどうちがうの。」
「まず,オスのハチは,秋になってから生まれ,顔が少し黄色くて,しょっかくの先がくるっと丸まってるんだよ。もちろん,おしりに針はないよ。」
「それじゃ,どうして,メスのようにさすマネをするんですか。」
「ひょっとして,オスのハチは,メスのハチのマネをすることで,敵をおどかしているんだ。」
「ピンポーン。さすがオー君。そのとおりなんだ。それに,このキボシアシナガバチの巣のまゆは,写真のようにあざやかな黄色なんだ。その色も,敵をびっくりさせて,近づかせないためなのかもしれないね。」
「ぼく,こんな黄色いハチの巣,見たことあるよ。」
「さされるからこわいハチにも,いろんな敵がいてたいへんなのね。」
アシナガバチの自己紹介
私の家族の1年を紹介します。冬の間,冬眠していた新女王蜂は春に目が覚めます。春の女王蜂は一人で巣をつくったり,卵を産んだり,子育てをしたりしてたいへんなんです。初夏になって働き蜂が生まれてくると,すべての仕事は働き蜂が引き受け,女王蜂は産卵をするだけになります。夏休みの終わりには家族は大きくなり,オス蜂が生まれ,来年のための新女王蜂も羽化してきます。秋が深まると,来年のために交尾した新女王蜂だけは,越冬の場所を探して冬眠につき,そのほかの家族はみんな死んでしまいます。