2.植物の世界
(4)被子植物(単子葉類)のなかま
(45)イネ科の植物もウォッチングしよう
「ねえ,花ちゃん,見て見て。あら不思議。お手手の中からケムシ君の登場だ。反対にするとケムシ君のさよならでーす。」
「うわー,おもしろい。私にもやり方教えて。あ,そうか,エノコログサを使うのね。なるほど,これはおもしろい。ちょっと待って,あれでもできるかな。」
そして,しばらくすると,花ちゃんはエノコログサのお化けのように大きなものを持ってきたとさ・・・。
「できる,できる。チカラシバのジャンボケムシでーす。」
「なるほど,こいつはおもしろい。おいらもやってみよう。」
「オー君。エノコログサもチカラシバも,どっちともイネ科の植物ね。」
「え! イネ科の植物? そういうのもあるのか。おいら,知らなかったな。」
「あのさ,私,思うんだけど,イネの仲間の植物って,秋になるとたくさんの実をならせるのね。」
「そうか,お米だってイネ科植物だ。」
「二人とも何をお話ししているのかな。モンタ博士も仲間に入れておくれ。」
「秋になると,イネ科の植物があちこちにいっぱい見られるという話をしていたんです。」
「そのとおりだね。イネ科の植物に関心を持つということはすばらしいことだよ。」
「どうして,そんなにすばらしいのかな。」
「ふつう,きれいな花というのは,どんな花かな。」
「今,一番きれいなお花といえば,いろいろあるけど,やっぱりコスモスかな。ピンクの色がステキだわ。」
「ノギクの仲間もいっぱい咲いているよ。」
「そうだろう。コスモスやノギクには色があるよね。ふつう,みんなはきれいな色の花ばかりに気づいてしまうだろう。ところが,イネ科の植物って,目立つ色なんてあんまりないだろう。」
「そういえば,エノコログサにしても,オヒシバ,メヒシバ,それから,ススキやジュズダマにしても花は目立たないわ。」
「そうだね。イネの花なんて,おいら知らないもんな。」
「そうだろう。だから,そういうイネ科の植物に気がつくということは,すごいということなんだよ。」
「どこにでもあるイネ科植物もこれからは,よく見ることにします。」
「そうしよう。それにしてもイネ科の花は地味だな。」
「モンタ博士が思うには,ほかの植物にはない『線の美しさ』があるんじゃないだろうかね。それからイネ科はめしべはとってもきれいなんだ。今度ルーペで見るといいよ。チゴザサのめしべはピンクがとてもきれいだよ。」
チゴザサ
イネはもともと熱帯の植物
主食を米にした日本では,米の栽培の歴史は悲惨な飢饉との戦いの歴史でもあった。今では品種改良も進み,病害虫への耐性も獲得してきたが,冷害には弱いところがある。それはなぜかといえば,植物が繁殖するときに最も低温に弱いのがおしべであり,特に花粉が成熟する時期であることが分かってきたからだ。イネの結実にはしょうがいが起きるのは穂が出て10日前後であり,この時期を穂ばらみ期という。穂ばらみ期に実験的に4日間だけ温度を12度にしておくと,半分以上の花粉が異常になり,米は実らないのである。米の品種改良が進んだとはいえ,もとは熱帯地域に起源する植物なのだ。なお,熱帯から北海道まで約7000年の歳月を要して伝播したのであり,他の野菜でもそうであるが,イネ科の品種改良も先人が残した歴史的遺産というべきものである。