3.動物の世界
(7)ハチ・チョウ・ガ以外の昆虫のなかま
(25)人間の血液型をキャッチできる蚊
「かゆい,かゆい。もうどうしようもなくかゆいわ。」
「花ちゃん,どうしたの? ウルシの木にかぶれたの。それともカにでもさされたのかな。見せてごらんよ。あ! これはカにさされたんだ。」
「何で,カは人をさすのかな。私,くやしいから,カのことをてってい的に調べてみるわ。そして,リベンジするわ。オー君も手伝って!」
「ほい,きた,OK。」
それから,二人は学校の図書室に行って調べたとさ・・・。
「人の血をすうカはメスだと書いてあるわ。どうしてかな。」
「タマゴを育てるためだとあるよ。なるほど。タマゴを育てるために,ママさんカもがんばっているんだな。おなかいっぱい血をすうと,300個くらいのタマゴを育てられるそうだ。すごいな。たいしたもんだな。」
「へんなところで感心してないで,私はかゆいんだから。ところで,カは血をすうだけなの? いつも何をすっているの? オスは何をすってるの。」
「ほら,ここに書いてあるよ。花のみつや果汁や草のしるをすうって書いてあるよ。」
「なるほど。あっ! それから,カはとまっても,すぐには血をすうわけではないみたいよ。口の先で皮ふのあちこちをふれたりして,毛細血管(とても細い血管)のありかをさがすんだ。たいしたものね。」
「2~3分も吸い続けると書いてあるよ。それで,まんぷくになるころには,体重が2倍にもなるそうだ。ちょうおでぶちゃんになるというわけだ。」
「私がバシッとたたいた時に,真っ赤な血がいっぱい出たわ。ところで,カをよびよせな方法はないのかな。」
「カはにおいに集まってくると書いてあるよ。汗や動物が出す息をキャッチするんだな。小さな体なのに,なかなか大したものだね。」
「ニオイがはっきりするためには,湿度(しめりけ)も大切とあるわ。それで,じめじめして,むし暑いところにカがいるのね。」
「モンタ博士。ぼくたち,カについて,いろいろと研究したでしょ。」
「なかなかよく調べたね。それじゃ,おもしろいことを教えてあげよう。カにさされたら,そのまま観察するんだ。はりが深く入ったところで,すばやくうでに力を入れるんだ。そうすると,きんにくがしまって,カははりがぬけなくなるんだ。それで,カは羽をバタバタして,見てて楽しいぞ。」
「それはおもしろそうだ。ぼくも実験してみる。行ってきまーす。」
「モンタ博士,その実験をしたら,どうなるの。かゆくならないの。」
「もちろんかゆいさ。そのうち,オー君もかゆがって帰ってくるよ。」
「うわあー。かゆい。かゆーい。助けてくれー!」
人の血液型を知っている蚊・・・
蚊に好かれる人とそうでない人がいます。いろいろな要因が考えられますが,血液型もその一つであるといわれています。A,B,O,AB型の血液の人を分けて,蚊を放したところ,O型の人が一番攻撃されたという実験データもあるそうです。
蚊が吸血源の動物を発見する手がかりとしては,まず化学物質による誘引があります。その一つが呼吸によって放出される二酸化炭素です。二酸化炭素以外の化学物質では,L乳酸に誘引活性があることが証明されています。L乳酸は人の筋肉で糖から作られ,汗とともに,皮膚の表面に分泌されます。L乳酸の量には人による差があり,蚊に刺されやすいかどうかという個人差の一因にもなっています。誘引された蚊の吸血を刺激する物質としては赤血球に含まれる5´ーアデニル酸やアデノシン3リン酸などが知られています。また,女性では,ホルモンの分泌周期により,蚊にさされやすい日とそうでない日がめぐってくるそうです。
これらの化学物質を感知する嗅覚器は,主に触角上に分布する感覚子です。また,メスの触角先端部にある2個の感覚子は温度受容器で人の体温を感じることもできます。酒を飲むと蚊に刺されやすいというのは,飲酒によって体温が上がり,二酸化炭素を放出する量も増えて,蚊を誘引するためであると言われています。お酒を飲む時は,時と場所を考えて飲もうというのは,蚊からのメッセージかもしれませんね。なお,耳元でブンブンいうから蚊という字になったかは不明です。