1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
(18)観察するということ(五感を使おう)
「モンタ博士,この前,お話ししてくれた五感って何ですか。」
「ぼくも知りたいよー。」
「二人ともよく覚えていたね。五感というのはね。自然のいろいろな様子を知るためには,言葉やテレビなどの映像だけでは,だめだということなんだよ。花のにおい,草のかおり,それから,虫をつかまえたときの感じなど,じかに自分で,自分の体全体でつかむことがとても大切なことなんだよ。」
「はーい,分かりました。モンタ博士,それで五感っていうのはなーに?」
「ぼく,少し分かるぜ。五つあるから,五感というのとちがうのかな。」
「そのとおり,ピンポーン。五つの感覚ということだよ。具体的にはね,目,耳,鼻,口,手のことだよ。この五つを使って観察することが大切だということだよ。」
「目で見るというのは,分かるけど・・・。」
「カレーライスを目で見て,うまそうだなと思って,鼻でクンクンにおいをかいでみて,口に入れてみたら,もっとうまくてということかな。」
「まあまあ,それもいいけど,植物や虫を観察するときの話だよ。どうもオー君は食べ物の話に持っていきすぎちゃうな。ところで,目で見るというのは,どういうことだと思うかね。オー君。」
「そんなのかんたんさ。あれはサクラで,これはタンポポだと見ることだろう。」
「私も,目ではよく見ているつもりだけど・・・。」
「ところがそうじゃないんだよ。見るということだって,いろいろな見方があるんだよ。」
「え! いろいろな見方?」
「うーん,どういうことかな。」
「巨人の目とアリさんの目ということかしら。」
「ピンポーン,そのとおり。大きな人になって,広く大きく見ること。全体を大きく見ることが大切だね。」
「それから,それから。」
「それから,自分がアリさんのように小さくなって,こまかく見ることも必要だね。」
「肉眼では見えないときには,虫メガネを使えばいいんですよね。」
「そのとおり,虫メガネは,科学の目なんだよ。」
「科学の目! なんだそりゃ?」
「ふつう,目では見えないものを見るときに,虫メガネ,顕微鏡,それから,電子顕微鏡というのもあるんだよ。虫メガネを使ってみると,今まで気づかなかったものも見えてくるし,それは,それは,楽しいよ。ちょっと科学者になった気分だよ。おっといけない。あとの4つの感覚はまた今度ね。」
レイチェル・カーソンの『センス・オブ・ワンダー』より
自然の不思議さや神秘さに目を見張る子供たちの感性をつちかうには,それをいっしょになって,再発見し,感動を分かち合う大人が,少なくとも一人,子供たちのとなりにいなくてはならない。
公害問題や自然保護運動の先駆者として,世界的に有名なアメリカの科学者(化学)。『沈黙の春』が名著。