1.身近な自然の観察
(4)生物と日本人のかかわり
(16)お灸とヨモギ(むだのない植物)
ヨモギ(キク科)
「オー君。これがヨモギだよ。
おもちに入れて草もちで食べたことがあるかな。」
「え! 食べられるの。ぼく,食べたい。」
「食べる前にお勉強しましょう。どうしておもちにヨモギを入れるの。」
「それはね,ヨモギという草はね,その緑色がいかにも春にふさわしいやさしい感じの色だし,かおりがとってもいいからなんだよ。」
「そうね,よく見るとすてきな緑色ね,かおりもどこか春らしい感じだわ。」
「それだけじゃないんだよ。まだまだあるんだ。それはね,ヨモギの葉っぱをよーく観察すると分かるよ。」
「よーく見るんですね。どれどれ・・・。あれ? 虫メガネで見ると,細い白い毛みたいなものがいっぱい付いているよ。」
「白い毛みたいなものがおもちを作るときに,つなぎといって,くっつける役目をするんだよ。だから,ヨモギの若い葉をモチグサともいうんだ。」
「ふーん。なるほどね。」
「それからね,この白い毛はね,ロウを含んでいるんだよ。それで,水をはじくようになっているんだ。ロウがあるから,この白い毛はよく燃えるんだ。」
「よく燃える木という意味で,『よ・も・ぎ』というのかな。」
「ピンポーン。そのとおりさ。よく知ってるね。おどろいたな。」
「いえいえ,たいしたことはないですよ。ところで,よく燃えると何か意味あるのかな。」
「二人とも『お灸(きゅう)』という言葉を聞いたことがあるかな。」
「お灸??? どっかで聞いたことがあるみたいですが・・・。」
「あ! 思い出した。ぼくのおばあちゃんが『お灸』をやっているのを見たことがあるよ。何だか綿みたいのをかたに置いて,火をつけるんだ。初めて見たときはおどろいたよ。おせんこうのようにもくもくとけむりが出るんだ。すっごく熱いらしいよ。」
「オー君は見たことがあるんだね。よかったね。」
「ヨモギっていろいろな役に立つ草なんですね。」
「まだまだあるんだよ。ヨモギをお風呂にいれたりすると,つかれた体が楽になるそうだよ。」
「どうしてなの,モンタ博士。」
「それはね,さっきもちょっとお話ししたけど,ヨモギはよいかおりがすると言っただろう。あのよいかおりというのは,実は油なんだよ。油といってもてんぷら油とはちがうよ。精油成分といったほうがいいかな。」
「精油成分? 何だかむずかしいですね。」
「むずかしく考えることはないよ。この精油成分,つまり,ヨモギのかおりにはいろいろと体に薬になる成分があるんだよ。だから,ヨモギというのは,古くから薬草として使われてきたんだよ。」
「本当にむだのない植物ですね。」
「この強いかおりは邪気をはらうといわれ,3月3日にはヨモギの入った草もちを食べ,5月5日にはショウブとヨモギの入ったお風呂に入るんだよ。昔からのならわしには,いろいろとそれなりの理由があったんだよ。昔の人はえらかったね。」
「それにしても,人間って,雑草といわれるような草でも,いろいろと工夫して生活に生かしてきたんだね。本当に感心しますね。」