2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
(9)植物の体のつくりと適応について(ビワの花の咲く季節)
ある日,オー君がひとり言をいいながらてくてくと歩いていたとさ・・・
「冬になって寒くなっても,いろいろな花がさくんだな。知らなかったな。サザンカだろ,オチャだろ,それから,もうないかな。ジロ!ジロ!あれ? なんだ。花みたいだけど・・・こりゃ,大発見だ。」
その後,花ちゃん,モンタ博士を連れてきて,三人で観察したとさ・・・
ビワ(バラ科)
「あれ,これは,たしかビワの花じゃないかしら。」
「そのとおりだね。ビワの花は寒い季節にさいて,夏の初めに実ができるんだ。」
「この寒いのによくがんばってさいているね。感心しちゃうよ。」
「ビワの花をこんなにゆっくりと見たことなかったけど,花びらの周りには,茶色の毛みたいのがいっぱいついているわ。どうしてかしら。」
「たぶん毛むくじゃらの方があったかいんじゃないかな。ぼくだって冬にはセーター着るもんな。」
「そのとおりだね。いいところに気がついたね。いま花ちゃんがゆっくりと見たと言っただろう。それが大切なことさ。何気なく見ているものでも,ゆっくりとしっかりとおちついて見ると,いろいろな発見があるということだね。」
「もうほかに発見することはないかしら。」
「ねえ,よく見ると,花は横を向いているけど,つぼみはだいたい下を向いているよ。どうしてかな。」
「これまたいいところに気がついたね。つぼみが下を向くということは,どうしてかなと考えてみようよ。ビワの花のさく季節は冬だね。それがヒントだ。」
「そうだ。分かったわ。ビワは冬でもさくでしょう。冬には雪がふるでしょう。もしつぼみが上を向いていたら,雪がつぼみの上につもって,つぼみがこおってしまうかもしれないわ。寒さから花を守るために,ビワの花のつぼみは下を向いているというわけですね。」
「そういうことなんだ。植物だっていろいろと工夫しているというわけさ。」
「植物って,けっこうえらいんだな。またまた感心しちゃったな。」
「植物は寒さという環境をのりこえるために,環境に合ったように植物の体を形づくっているというわけなんだ。このことを難しい言葉で『適応』というのさ。」
「なんか少し分かったような感じですね。それにしても,植物の秘密をさぐるっておもしろいですね。」
「植物だけじゃないよ。虫だって,鳥だって,そういうことはあるのさ。」
「虫か・・・。虫にまた会いたくなってきたな。虫がこのごろいなくなって,残念だな。どこかに虫がいないかな。ショボン・・・」
「それじゃ,あの木のところに行ってみようか。必ず何かいるぞ。」
「ほんと,どこ,どこ。どの木にいるの。ぼくの愛する虫ちゃんは・・・。」
「それは,ついてからのお楽しみだよ。さあ,てくてく行ってみよう。」