NO.73

ホタルブクロ

オー君 「なあ,花ちゃん,ホタルを見に行こう。」
花ちゃん 「うん。いいよ。どこに行こうか。」
オー君 「そうだな…。学校のうらの谷戸(やと)に行こう。たくさん飛んでいるらしいよ。この前の土曜日も,他の小学校の子どもたちが見に来たらしいよ。」
花ちゃん 「うーん。でも,わざわざ行かなくてもいいよ。私,今,ホタル持ってるもん。」
オー君 「うそだー。見せてみろよ。」
花ちゃん 「ホタルじゃないけど,ホタル…。ほらっ!」
オー君 「なんだ。ただの花じゃないか。ホタルと何の関係もないよ。」
花ちゃん 「それが,この花はホタルブクロという名前なのよ。オー君,知ってた。」
オー君 「いや,これは初耳だ。ホタルブクロとはおもしろい名前をつけたもんだな。」
モンタ博士 「そうだね。ホタルの飛ぶころにさいて,花の形がふくろになっているんだね。」
花ちゃん 「モンタ博士,昔,子どもがこの花の中にホタルを入れて遊んだので,この名前がついたというのは本当なんですか。」
モンタ博士 「そう言われているけど,いっしょに考えてみようよ。常識(じょうしき)といわれることでも,もう一度,じっくり考えることは大切なことだね。」
オー君 「昔の子どももホタルをとりに行く時,あみとか虫かごを持っていったと思うけどね,夜だから,ホタルブクロが近くにさいていたとしても,暗くて見えないはずだよな。」
モンタ博士 「なるほど,いいところに気がついたね。このホタルブクロという名前は,大人がイメージして作ったものかもしれないね。」
花ちゃん 「それにしても,私つくづく思うんだけど,ホタルブクロという名前は,とってもいい名前だと思うわ。なんか,ひびきがいいというか。日本人的というか。とってもうまくつけたと思うわ。」
オー君 「ホタルブクロににた植物は,外国にもあるのかな。」
モンタ博士 「いいこと聞くね,オー君。もちろんあるよ。外国ではどこの国でも鐘(かね)をイメージしたものばかりで,カンパヌール(フランス),グロッケンブルーメ(ドイツ),ベルフラワー(イギリス)などとよんでいるよ。でも,やっぱりホタルブクロの方がいい感じだね。日本人に生まれてよかったって感じだね。そして,日本人は昔から植物と仲良しだったということだね。」
オオマツヨイグサ

▼ホタルブクロのつぶやき

 私の本当の名前はホタルブクロといいますが,あちこちでいろいろな名前(方言)で呼ばれているんです。チョウチンバナ,トックリバナ,アメフリバナ,ポンポンバナ,ホタルグサ等々。どれも私の特徴をよくつかんでいるなーと感心してしまいます。私をじっと見つめてください。淡い紅紫色の花冠に小さな濃い紫色の斑点が私のチャームポイントかしら…。
 ところで,私の秘密を教えてあげましょう。それは,雌しべの先端部分が観察のポイントということかな。咲き始めたばかりの雌しべは先がとがっているのに,少したつと先端が3つに分かれるんです。それはなぜかというとね,同じ花では受粉しないようにするための工夫なの。雄蕊先熟花(ゆうずいせんじゅくか)というのね。くわしくは実物も見ながらでないとむずかしいかな。
 それから,私はキキョウの仲間なの。だから,葉をちぎると白い汁が出るのよ。うそだと思ったらやってみて!

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