NO.52

花ちゃん・オー君・モンタ博士のてくてく自然散歩シリーズ

□ハコベの七不思議ウォッチング

  ダイコンの葉
ハコベ
花ちゃん 「あ! これは,ハコベの花ですね。もうさいているんですね。」
オー君 「モンタ博士,ハコベというのは,どうしてハコベという名前なの。」
モンタ博士 「ハコベというのは,『はびこる』という説があるくらいによく増える植物だからなんだ。漢字では,『繁縷』と書くけど,これもまたよく繁るという意味さ。」
オー君 「ふーん。それじゃ,今日はハコベの不思議を見つけに行こう。」
モンタ博士 「ハコベの不思議,その1はね,まず,くきにあるんだ。くきをちぎって引っぱるとすじがあるんだ。やわらかいくきの中にすじがあるので,ふみつけに対して強さがあるということなんだよ。くきをちぎってごらん。」
オー君 「よーし,やってみることにしよう。えい! と……。あ! 本当にすじがある。これは,やってみないと分かんないな。何事も実験が大事だな。」
花ちゃん 「ハコベの不思議はまだあるの。」
モンタ博士 「ハコベの不思議,その2は花にあるんだ。写真で見ると,花びらは10枚あるように見えるだろう。でも,実際には5枚しかない。これは一枚の花びらが根元でウサギの耳のように二つに分かれているんだ。虫に気づいてもらうために目立つ工夫なんだろうね。」
花ちゃん 「なーるほどね。5枚より10枚のほうがきれいに見えるわ。」
オー君 「ハコベの不思議はまだまだあるの?」
モンタ博士 「ハコベの不思議,その3は,花の向きなんだよ。花がさくときは上向きなんだけど,さき終わると下向きにたれる。これは果実が熟すまで風雨をさけるためだね。また,下向きになることで,まだ受粉していない花を目立たせるためだね。そして,やがて種子を落とすころになると,少しでも種子を遠くへ散布させるために上向きにするんだ。」
オー君 「植物って動かないと思っていたけど,けっこうダイナミックなんだ。細かく観察しないといけないね。花ちゃん。」
花ちゃん 「そうね。ところで,ハコベの不思議はまだまだまだあるの?」
モンタ博士 「ハコベの不思議,その4は種にあるんだ。ハコベの種を虫めがねでよく見ると,表面にはでこぼこがあるんだよ。」
花ちゃん 「あ! そうか,この突起(とっき)が土に食いこむのね。ハコベの種は土といっしょに靴(くつ)の裏などについて遠くへ行くのね。引っ付き虫と同じなんだ。」
オー君 「ハコベは『運べ』でもあるな。種を『運べ』ということさ。」
花ちゃん 「オー君のだじゃれも,けっこういい線いってるね。ところで,ハコベの不思議はまだまだまだまだあるの?」
モンタ博士 「ハコベの不思議,その5は,虫がいなくても受粉ができるんだ。」
オー君 「それって,どういうこと?」
モンタ博士 「今のようにまだまだ寒い季節は虫も飛ばない。でもね,ハコベは,夕方になって花を閉じる時に,おしべが中央のめしべに集まって花粉を自分のめしべにつけてしまうのさ。こういうのを難しい言葉で自家受粉(じかじゅふん)というのさ。」
花ちゃん 「なーるほど。生き物っていろいろと子孫を残すために,いろいろな努力をしているということですね。ところで,ハコベの不思議はもうないでしょ?」
モンタ博士 「ところがあるんだね。最後に,ハコベの不思議,その6はね,くきの片側にある毛なんだよ。」
花ちゃん 「人間の毛は体を保護する役目があるけど,ハコベの毛も何か意味あるの?」
モンタ博士 「ハコベの毛をよく見ると,根元方向に向かってたくさん生えているね。これが重要なんだ。ハコベのしげる冬場は雨が少ない。そこで,この細かい毛はハコベの植物体についた水滴(すいてき)を根元に運ぶのでないかな。限られた水分をうまく利用しているのさ。だから,ハコベの葉は冬でもみずみずしいのかもね。」
花ちゃん 「ハコベは,道ばたや畑などどこにでも生えている雑草で,しかも小さい花だからだれも目を向ける人はいないけど,いろいろな秘密があるんですね。」
モンタ博士 「最後にハコベの学名『ステラリア』は,星,『スター』を意味するんだ。昔の人は,こんなに小さな花を『スター』としたんだね。」

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