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花ちゃん・オー君・モンタ博士のてくてく自然散歩シリーズ

□ツバキの花

  ツバキ
ツバキ
花ちゃん 「モンタ博士,とっても暖かくなってきましたね。」
オー君 「そうだよ。おいら,昨日は半そでで遊んでいたんだ。」
モンタ博士 「厳しい冬ともおさらば。だんだんと春らしくなってきてとても気持ちいいね。」
オー君 「ところで,モンタ博士。上の絵は,ツバキですか。」
花ちゃん 「オー君,そのとおりよ。虫だけでなく植物もくわしくなったわね。ところで,ツバキは春になると咲くので,漢字では『椿』となるのよね。おまけだけど,木へんに夏で『榎』(エノキ)でしょ。それから,草かんむりに秋で『萩』(ハギ),それから,木へんに冬で『柊』(ヒイラギ)というんですよね。モンタ博士。」
モンタ博士 「よく覚えていたね。そのとおりだよ。今日はツバキについてお話ししよう。もうそろそろ,あちこちで咲き始めていると思うよ。校庭にもあるよ。それから公園にもたくさんあったよ。みんなのおうちの近くにもきっとあると思うよ。」
花ちゃん 「モンタ博士,ツバキの観察ポイントというのは何ですか。」
モンタ博士 「それは,葉っぱだよ。」
オー君 「葉っぱ? ただの葉っぱだよ。ちょっと厚い感じで,少し光っているだけのただの葉っぱだよ。」
モンタ博士 「ただの葉っぱで片付けてはいけないよ。今,厚いとか光っているとかいったね。当たり前に見えることでも,それがどうしてかと考えることが大切だよ。」
花ちゃん 「あ! そうだ。思い出したわ。ツバキという名前は,厚い葉の木(アツバキ),または,光ってつやがある葉の木(ツヤバキ)というのが由来でしょ。」
オー君 「何だか,だじゃれっぽいですね。でも,何で,この葉は光っているの。」
モンタ博士 「そうだね。そのようになぜかな,と自分の頭で考えることが大切だ。葉が光っているのは,クチクラ層というワックス層があるためさ。」
オー君 「なあに,そのクチクラというのは。」
モンタ博士 「クチクラとはもともとはラテン語だけど,英語読みすると,『キューティクル』なんだ。シャンプーやリンスのテレビコマーシャルで聞いたことはないかな。」
花ちゃん 「あるわ,あるわ。髪の毛をキューティクルに守るとか言ってたわ。」
モンタ博士 「キューティクル,つまりクチクラは,表面をおおうワックスとして,葉っぱの内側を乾燥(かんそう)などから守る働きがあるのさ。」
オー君 「なるほど,ツバキが冬の乾燥や寒さをがまんして,緑の葉っぱをつけていることができるのは,このクチクラというもののおかげなのか。」
  ツバキ
園芸のツバキ
モンタ博士 「それだけじゃないよ。この仲間,つまり,葉の表面がテカテカに光っているような木(これを照葉樹という)は,自動車の排気ガスやけむりからも葉っぱを守っているんだよ。ところで,上の写真はツバキの園芸品種なんだ。江戸時代にはツバキの園芸種がたいへんなブームになったんだ。」
花ちゃん 「ふーん。モンタ博士,ツバキという木は,ふつうはどこにあるんですか。」
モンタ博士 「ツバキという木は北海道にはないけど,日本全国のどこの山にでも自然にある木なんだ。どちらかというと暖かい地方に多い木だね。」
オー君 「モンタ博士,ツバキの木は何か利用できるんですか。」
モンタ博士 「ツバキはね,木がかたくて,木のトンカチや楽器などにも使われるんだ。それから,お坊さんがたたく木魚(もくぎょ)もツバキの木から作られるそうだよ。それからツバキ油というのも有名なんだ。さらにシャンプーにも使われるそうだよ。」
オー君 「でも,モンタ博士。ツバキは,なぜこんなに寒い季節にさくのかな。」
モンタ博士 「それはね,鳥との関係からなんだよ。」
花ちゃん 「鳥……。あ! そうか。こんなに寒くては虫も飛ばないわ。それで,ツバキは鳥に花粉を運んでもらうのね。そういうのを風媒花(ふうばいか)ではなくて,虫媒花(ちゅうばいか)でもなくて,鳥媒花(とりばいか)というのよね。」
モンタ博士 「そうだよ。鳥は爬虫類(はちゅうるい)などと違っていつも体温が温かいね。そういうのを恒温(こうおん)動物というんけど,とてもカロリーを豊かにしていなければならないのさ。そのために,ツバキのおしべ・めしべのもとにあるあまいみつをもらうのさ。その時に花粉が体につくんだね。」
  ツバキ
ツバキの断面図
オー君 「そうか,冬には,えさになる虫が少ないからな。」
モンタ博士 「それから,ツバキの花の大きさや形や花の向きなどもよく見てごらん。何か気がつくことがないかな。」
オー君 「なるほど,ツバキの花は鳥がくちばしをつっこむのに都合がいい大きさだな。」
花ちゃん 「それから,ふつうの花は,上を向いたものが多いけど,ツバキは鳥たちがくちばしを入れやすいように横に向いているわ。」
モンタ博士 「そうなんだよ。植物と虫とはいっしょに進化して,どちらにも都合のよいようにできているんだ。それから,花の重さはどうかな。」
花ちゃん 「何だか重さのある花だけど,その理由は,ツバキの花びらは鳥の体重でもだいじょうぶなようにがっしりとしているからなのね。」
モンタ博士 「それじゃ,最後の観察として鼻を使ってみてごらん。ツバキの花はどんなにおいがするかな。スイセンのようなにおいかな。バラのようなにおいかな。」
オー君 「クンクン。クンクン。あれ? 何もにおわないぞ。」
花ちゃん 「クンクン,クンクン。本当だ。ふつうのお花というのは,においがするはずなのに,おかしいわ。」
モンタ博士 「においがしないだろう。それじゃ,においは何のためかをよく考えてごらん。」
オー君 「虫が来るようににおいを出すんだ。でも,ツバキには必要ないんだ。」
モンタ博士 「鳥は赤い色を見つけたり,目はいいけど,鼻はにぶいんだ。においはいらないんだよ。」

▼ツバキの赤い色はなんのため?

 赤い色はとてもよく目立つと同時に,なぜかとても食欲をさそう色でもある。街を歩くとよく目につくハンバーガー屋さんや牛丼屋(ぎゅうどんや)さんの看板(かんばん)の色調は赤が基本である。中華街を歩くと,赤が多いと感じたのは私だけでしょうか。ある人が青いふりかけを作ったところ,まったく売れずに人気も出なかったそうで,やっぱり赤は食欲をさそう色だ。ツバキの花は,鳥たちに「こっちにあまいあまいみつがあるよ。おいで,おいで!」と言っているのかもしれない。


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