イネ科の植物もウォッチングしよう
▼イネはもともと熱帯の植物
主食を米にした日本では,米の栽培(さいばい)の歴史は悲惨(ひさん)な飢饉(ききん)との戦いの歴史でもあった。今では品種改良も進み,病害虫への耐性(たいせい)も獲得(かくとく)してきたが,冷害には弱いところがある。それはなぜかといえば,植物が繁殖するときに最も低温に弱いのがおしべであり,特に花粉が成熟(せいじゅく)する時期であることが分かってきたからだ。イネの結実にはしょうがいが起きるのは穂(ほ)が出て10日前後であり,この時期を穂(ほ)ばらみ期という。穂ばらみ期に実験的に4日間だけ温度を12度にしておくと,半分以上の花粉が異常(いじょう)になり,米は実らないのである。米の品種改良が進んだとはいえ,もとは熱帯地域に起源する植物なのだ。なお,熱帯から北海道まで約7000年の歳月を要して伝播(でんぱ)したのであり,他の野菜でもそうであるが,イネ科の品種改良も先人が残した歴史的遺産というべきものである。