NO.264

ハチのひみつの世界 14 「アシナガバチ(3)」

 「うわあー,いろいろなハチの巣(す)がいっぱいですね。」
「これは全部アシナガバチの巣なんだよ。」
「アシナガバチは,いろいろな種類(しゅるい)がいるけど,巣の形もいろいろなんだ。」
「そのとおりだね。今日は,アシナガバチの巣についてお話ししようね。」
「でも,このハチの巣から,ハチは出てこないのかな。」
「何言ってるんだよ,花ちゃん。アシナガバチのハチの巣は1年ぽっきりなんだよ。だから,巣からハチが出てくることはないんだよ。」
「そうでしたね。ところで,同じアシナガバチでもいろいろな巣があるなんて,おどろきですね。」
「ちがいもあるけど,その前に,共通(きょうつう)な部分もあるだろう。何だろうね。」
「まず,巣の全体の大きさのちがいはあっても,一つ一つの巣はみんな六角形の形をしていますね。」
「それから,色のちょっとしたちがいはあっても,みんな灰色(はいいろ)っぽいですね。」
「そうだね。かれた木をかじりとったり,けずりとったりしたのは同じだもんね。では,一つ一つ見ていこうか。まず,下の写真を見て,何か気がついたり,発見したりできたかな。」
「このハチの巣は,一つ一つがとても大きいですね。」
「これは,キアシナガバチの巣だよ。」
「モンタ博士! 巣穴(すあな)が大きいということは,成虫も大きいということですね。」
「そうだね。キアシナガバチは,アシナガバチの中でもとくに大きいほうだね。」
「それにしても大きな巣ですね。」
「大きいということは,それだけ,巣作りがうまくいったということだね。」
「次のハチの巣も大きいですよ。」
「これはね,セグロアシナガバチの巣なんだよ。このハチも成虫(せいちゅう)はかなり大きいね。」
「前のによくにているけど,ちょっとそりかえった形になっているね。」
「そうね。キアシナガバチの巣は,もう少し山のようになっているわね。」
「そうだね。では,この2つのハチの巣の共通点はないかな。」
「そうですね。両方(りょうほう)ともハチの巣の柄(え)は,どまん中にありますね。」
「そのとおり,柄がどの部分にあるかということも,大切なポイントなのさ。ところで,下のハチの巣はどうかな。」
「あ! 柄はまん中ではなくて,はじっこにありますね。」
「そうだよ。このハチの巣は,コアシナガバチのものなんだ。」
「コという文字がつくということは,とても小さいアシナガバチなんですか。」
「そうでもないんだ。ハチの巣穴はそれほど小さくないね。ところで,次の写真のハチのほうが小さくて,きゃしゃな感じのハチなんだ。」
「なるほど。巣穴も小さい感じですね。それに,前のものほどがんじょうではなさそうですね。」
「ハチの巣は分かりますが,葉っぱがちょっとじゃまですよ。モンタ博士!」
「そうじゃないんだよ。このムモンホソアシナガバチというハチは,葉っぱのうらに巣を作る,とっても変(か)わった巣作りをするんだよ。」
「へえー,おもしろいハチもいるんですね。」
「おもしろいと言えば,次の写真を見てごらん。ハチと巣というと,丸っぽい感じのものが多いけど,これはどうだろうね。」
「ずいぶんと長細いハチの巣ですね。」
「横に長くできる巣なんですか。」
「そうではないんだ。写真をとるために,このようになっているけど,本当はたてに細長くのびるようなハチの巣なんだ。」
「この巣もどちらかというと,きゃしゃな感じですね。」
「そうだよ。名前を言わなかったね。これは,ヒメホソアシナガバチという種類なんだ。成虫はやはり小さい感じだね。」
「いろいろいるんですね。わたし,おどろきました。」
「それでは,これが最後だよ。写真を見て,何か気がつくかな。」
「前のハチの巣のまゆのふた,つまりキャップみたいのは全部白だったけど,こいつはちょいと緑色したうすいクリーム色をしているね。」
「そうなんだ。ほとんどのアシナガバチのキャップは白いんだ。このキボシアシナガバチとヤマトアシナガバチは,こういうクリーム色をしたキャップなのさ。」
「それにしても,このハチの巣は小さいですね。」
「そうだね。小さいね。ではどうして小さいのかな。」
「もともと小さいハチの巣ではないの。」
「このような小さなハチの巣は,母親バチが巣を作っている時に,途中(とちゅう)から作れなくなったということなのさ。」
「つまり,巣を最後まで完成(かんせい)できず,鳥やクモなどに食べられちゃったということですね。」
「いろいろと苦労(くろう)しながら巣を作っているんですね。」

 


戻る    【てくてく自然散歩シリーズ】 トップへ戻る
copyrights