NO.255

ハチのひみつの世界5 「ジガバチ」

「きのうお話ししてくれると言った『ジガバチ』というのはどんなハチなんですか。」
「ミンミンゼミというのは、『ミーンミーン』と鳴くだろう。それで、ミンミンゼミというんでしょ。だから、ジガバチも『ジガジガ』と鳴くのかな。」
「ピンポーン、そのとおり。でも、ハチが鳴くのではなくて、羽をブンブンと鳴らす音なんだ。羽があまり小さくてうすいから、それで、ジガジガと聞こえるのさ。」
「ふーん、そうなんだ。ところで、右の絵がジガバチですか。とてもスマートでスリムですね。」
「それに、長い柄(え)のように細くくびれているんだね。」
「矢印(やじるし)のところは、赤い帯(おび)のようになっていて、他はどこも黒いのがとくちょうさ。」
「ジガバチはどんな生活をしているんですか。」
「まず、ジガバチは地面に穴(あな)をほるんだ。」
「どうやって、穴をほるのかしら。」
「まず、人間ならばシャベルを使うね。犬ならば前足を使うね。でも、ジガバチは口でかみついたり、足も使ってほるんだよ。」
「その後、ほり終わったらどうするの。」
「えものを狩(か)りに行くんだけど、その前にジガバチはきちんと戸じまりをするんだ。」
「戸じまり? 戸じまりって、よそに行くときに玄関の戸をしめるように?」
「そうなんだ。おもしろいことをするね。そこで考えてみようよ。どうしてそんなことをするのかな。」
「せっかくほった穴に他の虫が入り込んだらたいへんだからですか。」
「そうだね。アリやムカデ、クモなどいろいろな虫がいるからね。」
「そして、その後、狩りを始めるんですね。」
「そうだね。ジガバチのえものは何だったかな。」
「大きなイモムシですね。おすもうさんのように太っているし、体は大きく長いですね。ジガバチはだいじょうぶでしょうか。」
「ジガバチは、やせっぽちだし、弱そうだよ。」
「ところがすっとこどっこい、だいじょうぶ。ジガバチはなにくそ!とイモムシの上に飛び乗るんだ。そして、オレンジ色のおしりをくるりと曲げて、イモムシの体の下におしりの針(はり)をさしたとさ。すると・・・・・・。」
「すると・・・・・・、ふしぎふしぎ! イモムシは体を丸めて、それきり動かないわけですね。」
「ジガバチくんのスーパー麻酔銃(ますいじゅう)のパワー全開というわけだ。」
「ところが、まだまだたくさんのお仕事がのこっているんですよね。」
「そうだね。このイモムシをさっきほった穴まで持っていかなくてはならないんだね。100mも引きずったという記録(きろく)もあるよ。」
「よいしょ、こらしょっと運んで、巣の中に入れてからすることは・・・・・・。」
「そうです。麻酔をかけたイモムシのおなかの上にたまごを産むのです。」
「大事なお仕事はそこまで。後は穴をふさいで、バイバイというわけだ。」
「その後はどうなるんだろうね。」
「地面の下の巣(す)では、たまごがかえり、ジガバチの子どもの登場。」
「そして、ジガバチは自分が乗っているのは、ねどこではなくて、大きなお弁当箱(べんとうばこ)だと気がつくんですね。」
「そうだね。そして、おちちを飲むように、イモムシの体のしるをごくんごくんと飲み始めるのさ。」
「お母さんジガバチがしっかりと麻酔をかけてくれたので、安心してごくんごくんと飲めるのね。」
「そうだね。そして、そのうち、イモムシよりも大きくなって、口から細い糸をはいて、体のまわりにまゆを作るんだ。そして、さなぎになって、春をじっと待つのさ。」

吉田兼好の「徒然草」にも登場

 日本三大随筆というものがあります。つまり、清少納言の『枕草子』、鴨長明の『方丈記』そして、吉田兼好の『徒然草』。その名著の中にこのジガバチもきちんと記載されています。このジガジガという羽音を昔の人もよく聞いていて、ジガバチと命名する由来になったと言われています。昔の人は虫の行動を本当によく見ていたと感心させられます。きっとハチがイモムシを土の中に埋めているのを見て、「おもしろいことをするな。どうなるのかな。」と思っていたのでしょう。すると、そのうち春になってからハチが出てくるではありませんか。「きっとイモムシがハチに姿を変えたのだ。なぜなら、ハチは『似我(じが−我に似よ!)似我(じが−我に似よ!)』と呪文をかけていたもんなあ。」と考えたのでしょう。


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