NO.253

ハチのひみつの世界3 「寄生バチ」

「ねえ、みんな。モンシロチョウやアゲハチョウを育てたことあるでしょ。その時、何かこまったことはなかったかな。」
「そう言えば、モンシロチョウを育てていて、どんどん大きな幼虫(ようちゅう)になって、楽しみにしていたのに、たくさんのウジが出てきて、まゆを作っていたわ。」
「それから、アゲハチョウのさなぎが突然(とつぜん)穴(あな)があいて、アゲハではなくて、かなり大きなハチが羽化(うか)したことがあるよ。」
「そうだろう。それは、どうしてか知っているかな。」
「それは、寄生(きせい)バチが寄生したためなんでしょ。」
「そのとおりだね。コバチ、ヒメバチ、コマユバチなどのハチは、寄生バチと言うんだよ。」
「寄生するなんて、何だか気持ち悪いですね。」
「そんなことを言うもんじゃないよ。それがきびしい自然の世界というものさ。」
「人間の世界だって、寄生はあるんだよ。寄生虫という言葉を聞いたことがあるかな。人間の場合には、寄生虫が人間を食い殺(ころ)すことはないけど、これらの幼虫は成熟(せいじゅく)するまでに寄主(きしゅ)をかならず食い殺してしまうんだ。これも本物の自然の世界というものだね。」
「モンタ博士。この寄生バチというのは、他にどんなとくちょうがあるんですか。」
「寄生バチというのは、とても小さいものが多いんだ。種類(しゅるい)がめちゃくちゃ多くて、まだ、名前のついていないハチもかなりいるそうなんだ。」
「それじゃ、新種もこれから見つかるということですね。」
「そうだね。きのうお話ししたキバチやハバチなどは、植物にたまごを産(う)むだけだったけど、寄生バチは、動く虫にたまごを産むから、たいへんなんだよ。」
「何がたいへんなんですか。」
「虫は動くから、寄生バチがたまごを産みつけようとする時がたいへんなんだ。」
「そうなんだ。だから、この寄生バチは、キバチなどよりも進化した体のつくりになったんだけど、どういうことか分かるかな。」
「ふーむ。むずかしいですね。」
「ふーむ。むずかしいなあ・・・・・・。『進化した体のつくり』か・・・・・・。よし、くらべてみることしよう。」
ということで、この前のキバチやハバチの形とくらべてみたとさ・・・・・・。
       
「あ! 発見! 発見! 大発見だ! 分かった。寄生バチは、おなかのあたりが少し細くなっているぞ。」
「そのとおりだ。よく気がついたね。でも、それでおしまいにしてはダメだよ。どうして、そうなっているかを考えることがおもしろいし、それが科学というものさ。」
「ふーむ、どういうことだろう?」
「ねえ、さっき寄生バチは、動いている虫にたまごを産むと言ったでしょ。だから。」
「だから、つまり、何を言いたいわけだい。」
「つまり、おなかが少しくびれていれば、おなかが自由に動きやすいということでしょ。つまり、たまごを産みつけやすいというわけですか。モンタ博士。」
「ピンポーン、そのとおりなんだ。その後のハチはほとんどがおなかが細い、つまり腰(こし)の部分だね。そこがせまくなっているんだ。そして、それらのハチを細腰亜目(さいようあもく)というんだ。」
「つまり、ハチの体の形は、その生活がしやすいように、長い年月をかけて変化してきたというわけですね。」

生体防御反応(せいたいぼうぎょはんのう)はどうなるの?

 生物の体には、その体内に侵入した異物を感知して、これを攻撃して害のないものにし、その体を守る働きがあり、これを生体防御反応と言います。寄生バチに攻撃される昆虫にとって、体中に産みつけられた寄生バチの卵は異物となるので、ふつうならば、生体防御反応が起こるはずです。寄生バチが体内で育つために、この生体防御反応を打破する何らかの方法が必要であり、それがなければ寄生バチは生きていけません。この点について研究を進めている人の報告によると、寄生バチの卵の表面の物質や、産卵時に卵の表面につく毒のような物質、さらに、卵に含まれる共生ウイルスなどの要因が関係し、寄主が寄生バチの卵を異物として感知できなくなることが分かってきています。小さな寄生バチの世界にも、人間の想像を超えた科学のドラマが隠されているようです。


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