NO.183

リョウブは虫のレストラン

「きのうは、やぶかないぞう……ではなくて、ヤブカンゾウというお花を見せてもらったな……。あれあれ? むこうから、モンタ博士と花ちゃんが来るぞ。あれあれ? モンタ博士は手に何か持っているぞ。」
「ほんとうに、よくにおうお花ですね。」
「そうだね。だから、いろいろな虫が来るんだね。」
「え! 虫が来る? 何だ、何だろう。モンタ博士、花ちゃん、何のお話ですか。」
「今ね、このリョウブの花のお話をしていたんだよ。」
「夏になって、リョウブのお花があちこちにさき始めたでしょ。」
「何! じょうぶ? へんな名前だな。」
「じょうぶではなくて、リョウブというのよ。」
「リョウブというのはね、漢字で令法(リョウブ)と書くそうなんだ。命令(めいれい)の令と、法律(ほうりつ)の法だね。」
「名前のいわれは少しややこしいらしいの。でも、この木の春の若葉(わかば)は、ごはんといっしょに入れてたくとおいしいそうよ。」
「そうだよ。リョウブ飯(めし)と言って、昔の人は食べていたそうなんだ。ちょっと前、ある教科書の物語教材にもリョウブ飯のことが書いてあったよ。」
「ともかく、このリョウブという木のお花はよくにおうのよ。だから……。」
「だから、たくさんの虫がこのリョウブに来るということだね。」
「そのとおりさ。このあまいかおりで、チョウやハチ、ハナアブ、ガ、甲虫(こうちゅう)など、さまざまな昆虫(こんちゅう)が集まってくるんだ。」
「つまり、どんな虫でもよく集まってくるということね。」
「よーし。どんな虫が来るか、調べてみよう。リョウブは虫のレストランだ。」
「虫のレストラン……。なるほど。オー君もおもしろいことを言うね。」
ということで、オー君は、リョウブの花の下でじっと虫たちのくるのを待っていたとさ。
「ともかく、花と虫とは昔から仲(なか)が良かったということだね。それにしても、オー君はいつまで、花の下にいるんだろうね。」
「そうですね。ひょっとして、夏休みの自由研究にするのかもしれませんね。」

植物の語源について……リョウブ

 深津正氏の著作『木の名の由来』の中で、律令国家の末期にあたる平安時代の初期から中期にかけて、農民に対し、田畑の面積を基準として、一定量のリョウブの植栽および葉の採取と貯蔵とを命ずる官令が発せられ、この官令、すなわち令法がそのままこの木の名前になったと、氏は推論しています。なお、リョウブは、若葉を湯がいて、これを乾燥させ、飯に混ぜ、あるいは穀物の粉といっしょにして団子にして食べるなど、救荒植物として古くからたいへん重要なものだったそうです。


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