NO.163

フィトンチッドのお話−その1

「花ちゃん・オー君、元気かい。モンタ博士はね、土曜日に山に登ってきたんだ。一人てくてくもたまには楽しいものだね。ところどころ、色づき始めた紅葉(こうよう)がきれいだったし、とても気持ちよかったね。」
「え! 一人で行っちゃずるいよ。おいらも連れていってほしかったな。」
「そうですよ。今度は必(かなら)ずいっしょに連れていってくださいね。ところで、どんなコースで歩いたんですか。」
「まず、バスに乗って、登山口でおりて、それから、雑木林の道を歩いたんだ。いろいろな木がたくさんあり、気持ちよかったね。」
「ところで、何で山に登ると、そんなに気持ちよくなるんだろう。」
「山道を登るのは、おなかもへるけど、頂上(ちょうじょう)についた時の気分は最高(さいこう)だな。」
「それに、たとえ山に登らなくても、遠くから森をながめただけでも気分が休まるし、心がなごむのは、どうしてなのかしら。考えれば考えるほど、とても不思議(ふしぎ)ですね。」
「それはね、森の空気が人間の体にとってもよいからなんだよ。」
「それは、森の中に入ると、空気がおいしいというのと同じことかな。」
「そうだね。森の木が発する木のかおりというか、風のかおりというか、そういうものが心をなごませてくれて、心地(ここち)よいものにしてくれるということが最近の研究でもはっきりとしてきたんだ。」
「それで、森林浴(しんりんよく)といって健康(けんこう)のために、みんなで山に登るようになったんですね。」
「森林浴……。うん。聞いたことがある言葉だぞ。それで、その森の木が発する木のかおりの『もと』って、いったい何なんですか。」
「その空気のかおりがとても体にいいんだね。それをむずかしい言葉で、フィトンチッドというんだよ。」
「フィトンチッド?」
「え! ふとんがちょっと?」
「ふとんがちょっとじゃなくて、フィトンチッドですね。」
「初めて聞く言葉です。もっと分かりやすく説明してほしいなー。」

人類の偉大なる母胎・・・森の効用その1

 釈迦はボダイジュの木の下で悟りを開き、エホバは香柏(こうはく、レバノン杉)の木の下で祭壇を設けた。孔子は楷(かい)の木の下で道を説き、ソクラテスはプラタナスの木の下で哲学をした。などなど、森林や木々の香りは、神経の活動を盛んにさせ、精神の集中にも役立ったのである。哲人たちの高次神経活動が特定の樹木と関連して言い伝えられていることは、樹木からのフィトンチッドの効果を示すさまざまな実験と符合していると言える。


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