NO.161

センブリは苦い

「モンタ博士! この前の土曜日に,ある所で,すごい植物を見つけちゃいました。」
「すごい植物? いったい何を見つけたの。」
「ふむふむ,なになに? ある所で……。」
「白い花で,よく見るとむらさき色のすじが入っていて,高さは15cmくらいでした。上に絵をかいてきました。」
「ぎょ! これは,センブリだね。へえー! よく見つけたね。」
「え! ドンブリ……?」
「ちがうわよ。センブリですよ。とてもかわいいお花ですよね。」
「それにしてもよく見つけたね。このセンブリというのは,それはそれは有名な薬草なんだよ。」
「え! ドンブリが薬になるの。何の薬なの。」
「何度言えばいいの。ドンブリではありません。センブリです。」
「オー君。このセンブリはね,とてもにがくて,胃(い)のお薬になるんだよ。」
「え! とてもにがいんですか。」
「センブリというのはね,とてもにがくて,千回ふり出しても,まだにがいと言われているんだ。」
「ふり出すって? ……どういうこと。」
「ふり出すというのはね,ティーバッグのようにお湯や水に成分(せいぶん)をとかし出すことだよ。」
「モンタ博士! にがいっていうけど,どのくらいにがいんですか。おいらちょいと実験(じっけん)してみるね。それでは,葉っぱを1枚(まい)だけちょいといただいて……。」
「あ! ちょっと待って!」
「あ! ちょっと待って!」
「もぐもぐ……,ゲーッ! ワーッ! オーッ! アーッ! ウーッ! ヒーッ!」
「あーあ。食べちゃった。」
「あーあ。食べちゃった。」
「ゲーッ! ワーッ! オーッ! アーッ! ウーッ! ヒーッ! やっぱり,『良薬(りょうやく)は口ににがし』だ!」

センブリのつぶやき

 センブリは秋の花。山の草原や明るい林の中などで可憐な花を咲かせ,目を楽しませてくれます。『良薬は口に苦し』のことわざがぴったりする薬草で,その苦さは強烈で,食欲不振や消火不良の時など,ほんのわずかでも胃の薬になります。センブリは栽培がとても難しい野草といわれ,小さい草なので,量を集めるのも苦労し,高価な薬草だったそうです。そこで,いろいろな学者が集まり,その栽培方法を研究したそうで,そのうち,みごとに量産できるまでになりました。しかし,このセンブリは少量でも効き目があり,たくさん作っても需要が伸びなくて,供給も少なく,結局は苦い思いをしたそうです。


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