刺さないアシナガバチ
「キャー! ハチ! 助けて!」 | |
「うわあー。本当だ。ハチだ。モンタ博士! あやうし!」 | |
「えっへん。モンタ博士はね,ハチとも仲良くできるんだ。それで,ハチにさされないんだぞ。」 | |
「でも,おしりを曲げて,今にさそうとしていますよ。」 | |
「そうだよ,モンタ博士! あぶないよ。すぐにハチをポイしたほうがいいよ。」 | |
「二人とも心配してくれて,ありがとうね。でもね,このハチはぜったいにぜったいにささないんだよ。」 | |
「本当ですか。でも,どうしてですか。」 | |
「それはね,このハチはね,針(はり)のないオスのハチだからだよ。」 | |
「え! ハチって,さすのはメスだけなんですか。」 | |
「そうなんだよ。そもそもハチの針というのは,産卵管(さんらんかん)が変化(へんか)したもので,えものをとるためではなく,自分たちの巣(す)を守るための武器(ぶき)なんだ。」 | |
「ふーん。それで,巣に近づいたりすると,さされるんですね。」 | |
「そうだよ。このハチはね,正しくはキボシアシナガバチという種類(しゅるい)だけど,これからの季節,スズメバチなどにも十分に気をつけてくださいね。」 | |
「ところで,オスのハチって言ったけど,メスとどうちがうの。」 | |
「まず,オスのハチは,秋になってから生まれ,顔が少し黄色くて,しょっかくの先がくるっと丸まってるんだよ。もちろん,おしりに針はないよ。」 | |
「それじゃ,どうして,メスのようにさすマネをするんですか。」 | |
「ひょっとして,オスのハチは,メスのハチのマネをすることで,敵(てき)をおどかしているんだ。」 | |
「ピンポーン。さすがオー君。そのとおりなんだ。それに,このキボシアシナガバチの巣のまゆは,写真のようにあざやかな黄色なんだ。その色も,敵をびっくりさせて,近づかせないためなのかもしれないね。」 | |
「ぼく,こんな黄色いハチの巣,見たことあるよ。」 | |
「さされるからこわいハチにも,いろんな敵がいてたいへんなのね。」 |
アシナガバチの自己紹介(じこしょうかい)
私の家族の一年を紹介(しょうかい)します。冬の間,冬眠(とうみん)していた新女王蜂は春に目が覚めます。春の女王蜂は一人で巣をつくったり,卵を産んだり,子育てをしたりしてたいへんなんです。初夏になって働き蜂が生まれてくると,すべての仕事は働き蜂が引き受け,女王蜂は産卵をするだけになります。夏休みの終わりには家族は大きくなり,オス蜂が生まれ,来年のための新女王蜂も羽化(うか)してきます。秋が深まると,来年のために交尾(こうび)した新女王蜂だけは,越冬(えっとう)の場所を探して冬眠につき,そのほかの家族はみんな死んでしまいます。