NO.139

アキノタムラソウ(日本のサルビア)

「もう秋です,ぜったい秋です。」
「何を言ってるんだ。まだ夏だよ。もちろん夏だよ。こんなに暑いんだぜ。」
「いいえ,もう秋です。」
「いやいや,まだ夏だ。」
「こらこら,けんかはいけないよ。なかよくしようね。ところで,さっきから,何をそんなに言いあらそっているの。」
「二人でね,今の季節(きせつ)は,夏か秋か,当てっこしているの。」
「そうか。夏といえば,まだ夏だし,秋といえば,もう秋ってところだね。」
「もう,どっちなの。分かんなくなっちゃった。」
「あのね,『春』は光の中に,『秋』は風とともに……なんてよく言うね。」
「そうね,そういえば,春が近くなると……。」
「『光の春』なんてよく言うよね。」
「そうね,そういえば,朝や夕方など秋が近づくと……。」
「ひんやりとすずしい風がふくよな。」
「そうだろう。大切なことはね,自然のようす。つまり,虫や草花などの生き物,風や光,星や水や空気の変化(へんか)に気づくことじゃないかな。」
「そうか,そういうものから,季節を感じとればいいんですね。」
「そうか,そういうものから,季節を知ればいいというわけだ。」
「そうだろう。カレンダーは人が作ったものだよね。そして,1月から12月まで,春・夏・秋・冬と,いちおうは決めてあるだけだよ。」
「大切なことは,カレンダーなんかじゃなくて,自分の目や耳など,体で知るということですね。」
「そうだね。植物は,季節とのかかわりの中で,名前がつけられたものもたくさんあるんだよ。きょうは,その中で,秋という名前のつくものを紹介(しょうかい)しよう。」

アキノタムラソウのつぶやき

私はアキノタムラソウというのよ。本当は,秋という名前がついているけど,7月ごろから花を咲かせ始めるの。シソ科の植物だから茎が四角いのよ。赤い花を咲かせるサルビアが花壇にあるけど,私は野生の自然の野山にあるサルビアよ。学名でサルビア・ヤポニカ(Salvia japonica)というの。花の色は淡い紫色よ。私によく似たキバナアキギリというのもあるけど,学名でサルビア・ニッポニカ(Salvia nipponica)といい,花はやや濃いめのクリーム色。両方とも日本にしかない植物なんでーす。よろしく。


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