NO.138

ネムノキの不思議

「いよいよ明日から夏休み。無事故(むじこ)で楽しく元気な夏休みにしようね。」
「今年の夏休みには、漢字の勉強と、いろいろなチョウをゲットするぞ。」
「私は、たくさんの読書にチャレンジするの。それから、地域(ちいき)の植物調べもするの。」
「そうだね。長いお休みだから、計画的(けいかくてき)にすごそうね。ところで、上の草は何だか分かる。」
「なんだろうなあ。おいら、はじめて見るものかな……?」
「うーん。見たことあるような気もするわ。」
「それでは、二人とも、その草にちょっと手をふれてごらん。楽しいよ。」
「あ! 葉っぱが……とじちゃった。あ! ひょっとして、これは……。」
「分かった! これは……オジギソウですね。」
「ピンポーン、そのとおり。手でちょっとふれただけで、葉がとじたりしてしまうんだね。おもしろい植物だね。これは、ホームセンターで120円で買ったものなんだよ。」
「それで、オジギソウがどうかしたんですか。」
「今日はね、オジギソウを紹介(しょうかい)したかったのではなくてね、本当はね、下の写真の植物のお話をしたかったのさ。」
「ピンク色の花で、なかなかきれいですね。」
「あ! これは、ネムノキですね。」
「さすがは花ちゃん、よく知っているね。」
「なになに、『ねむる木』だって?」
「ちがうわよ。夜になるとね、葉っぱがねむるようにとじたりするの。それで、      ねむっているようだから、ネムノキというのよ。」
「そうなんだよ。上の写真はね、夜8時ごろのものなんだ。そして、下は翌日(よくじつ)の朝、お日様がのぼった7時ごろのものだよ。モンタ博士が撮影(さつえい)したものさ。」
「へえー、なーるほど。おもしろいものですね。おいらも見てみようっと。」
「夏の夜には、マツヨイグサやカラスウリの花もさくわ。」
「そうだ。夜の昆虫採集(こんちゅうさいしゅう)もけっこうおもしろいかもしれないぞ。」
「そうだね。夜の観察(かんさつ)で、いろいろなものをさがしてごらん。それから、夏の朝は、とても気持ちいいからね。てくてくするのに最高(さいこう)だね。夜、星もいいよ。とくに、8月12日や13日ごろには、ペルセウス座(ざ)流星群(りゅうせいぐん)という流れ星がいっぱい見られるからね。ともかく無事故で楽しく元気な夏休みにしよう。」

子どもといっしょに自然を見つめてみませんか……。

ある大学の先生が、子どもの体験活動に関する調査を行った。それによると、「太陽が昇るところや沈むところを見たこと」がほとんどない子どもが35%。「夜空いっぱいに輝く星をゆっくり見ること」がない子どもは23%とある。保護者にも同じ調査を実施したところ、ほとんど経験がない親が前者で11%、後者で8%。その結果、親の世代と比べ今の子どもたちの自然体験が減少していることが分かる。 いつでも見られる平凡なもの……、だから見ないのか。それだけだろうか? 子どもたちが朝日や夕焼け、満点の星を見た経験が少ないのは、いっしょに美しいと感じてくれる大人が、周りにいなかったからではないだろうか。忙しいのは子どもではなく大人の方で、夕暮れに子どもといっしょに沈む夕日を眺め、「すごいなー」と語りかけるゆとりを大人が失ったからではないだろうか。子どもたちは、朝日や夕焼けを見る機会があったとしても、だれかと感動を分かち合った体験がないから、心に刻み込まれないのでは……?


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