2.植物の世界
(8)植物の名前・分類・特性について
(660)植物名はなぜカタカナか?(牧野富太郎)
「花ちゃん、いつも不思議に思っていることがあるんだけど⋯⋯。」
「なあに? どうしたの? オー君。」
「あのね、植物の名前って、いろいろな人が考えたり、地域によって呼び名がちがっているのはいいんだけど、どうして『カタカナ』なのかな。」
「そうね。そう言われればそうね。でも、考えたことはなかったわ。」
「理科の教科書や、国語の本にも『カタカナ』が使われているよね。」
「そのとおりね。モンタ博士! どうして植物の名前は、『漢字』ではなく、『カタカナ』なんですか。」
「とてもいい質問だね。それでは、まず、モンタ博士から聞くけど、植物の勉強をしたのは、だれなんだろうね。」
「それは、たぶん、大昔の人ですね。」
「では、それはなぜかな。何のために植物の勉強をしたんだろうね。」
「大昔の人が、これは食べられる草だとか、この実はおいしいとか、そうやって、調べたんでしょうね。」
「そうだね。食べてもおなかをこわさないし、おいしいということは大切だね。でも、もう一つ大事なことがあったんだけど⋯⋯、つまり、ヒントは、草を食べたら、体が楽になったということだよ。」
「草⋯⋯??? 体が楽⋯⋯??? 分かった。薬だ! 草かんむりと楽を合わせれば『薬』になります。」
「そうだね。植物の研究は、始まりが薬の研究だったんだよ。」
「薬と名前について、どんな関係があるのですか。」
「昔むかし、植物が薬になる研究をしていたのは、どこの国だと思う。」
「ひょっとして、中国ですか。」
「そのとおり、中国なんだ。そのころの日本は、中国からいろいろなことを学んだり、物を取り入れたりしていたんだ。植物の研究の『本草学』もその一つだね。」
「話は元にもどしますが、それと、植物の名前のカタカナとは、どういう関係があるのですか。」
「日本では長い鎖国が終わって、明治という時代になり、中国から伝わってきた『本草学』というものがあり、植物の名前も中国に習って漢字で表していたんだ。」
「それが、どうしてカタカナになったのですか。」
「それには、ある有名な人物が関係しているんだよ。」
「それは、だれですか。」
「それは、日本の植物学の父と言われる、牧野富太郎という人だよ。」
「なんか、聞いたことがあるような、無いような⋯⋯。」
「わたし知っています。日本が世界にほこる有名な、牧野富太郎博士ですね。図書館に伝記もありますね。NHKの朝ドラで『らんまん』という番組が放送されていましたね。牧野富太郎をモデルにしたものですね。」
「そうそう、そうなんだ。モンタ博士も毎朝見ていたよ。」
「その牧野富太郎さんが、どうしたのですか。」
「牧野富太郎は、日本の植物にちがう国の文字を使うのはどうなのか。日本には、カタカナというすばらしい文字があり、それを使って植物の名前を書くようにしようと、みんなに言ったんだよ。」
「たしかに自分の国の植物には、自国の文字を使う方がいいですね。」
「読み書きがめんどうくさい漢字を使うよりも、日本の文字であるカタカナを使う方が合理的で便利だったのでね。」
「そうやって、カタカタ書きになったというわけですね。」
「そうだね。現在も日本では、植物の学術名称にはカタカタを用いることが決まりになっているのさ。」
日本が世界に誇る偉大な植物学者:牧野富太郎
1862年(江戸時代末期)高知県佐川村に生まれる。実家は雑貨商と酒造業を営む裕福な家に生まれ、幼少の頃より植物に興味を持ち植物観察に夢中になる。日本植物分類学の権威。日本植物学の父と言われる。命名した植物は1500種もあり、生涯に50万点の標本作成や観察記録・随筆など多数。東京都立大学には、その標本が保存されている。高知県には牧野植物園、
練馬区東大泉にも牧野記念庭園がある。モンタ博士は全て訪問し、その業績を学び感動したことを覚えている。また、多数の書物があるが、『学生版 牧野日本植物図鑑』は、モンタ博士が初めて買った植物図鑑で、たくさん勉強させてもらった思い出の図鑑でもある。なお、NHKの朝の連続ドラマでも、フィクションの部分も多くあるが、2023年春から秋まで放送されていた。