4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(5)地質や地形の世界
(655)なぞの油のまくは何だ?
「これから、花ちゃんとオー君に2枚の写真を見せるから、その感想を言ってほしいな。どんなことでもいいよ。」
「はい、分かりました。たぶんきれいなお花かな。」
「いや、きっとめずらしい昆虫かもしれないよ。」
「それでは見せてあげるね。ほら! 見てごらん。」
「何ですか、これ? 油がうかんでいるようですね。植物もあるし、水があって、その上に変なものが⋯⋯やっぱり油ですか。毒でもあるんですか。」
「ぼくも花ちゃんと同じで、油みたいに見えるなあ。あっ! そうだ。だれかが油をこぼしたんじゃないのかな。さわらない方がいいみたいだよ。」
「これはね、年がら年中水がある所で、『湿地』という所なんだ。そこで撮った写真だよ。水のきれいな川などにある『セリ』という山菜を取りに行った時に見つけたんだ。」
「こんなにグジャグジャしていたら、歩くのも大変ですね。」
「そうだね。あまり人が行かないし、人家などもなくて、山から流れてくる水だけだから、とてもきれいな所だよ。こんな足あともあったけど、分かるかな。写真を見せるよ。」
「うわあー。グジャグジャ、どろんこですね。左がモンタ博士の足あとですね。」
「イノシシの足あとは、こんな形なんですね。初めて知りました。」
「そうなんだよ。動物の足あとというのも、またおもしろくてね。またお話しするね。話題を元にもどして、湿地にはセリがあって、きれいな水があるけれど、この油はなんか変な感じだよね。」
「あっ! そうか、近くに自動車の修理工場とかがあって、そこから流れてきたものじゃないかな。毒でもあるんですか。」
「近くには家もないし、山と沢があるだけだよ。本当にこの油みたいなものは何だろうね。知りたいね。分からないね。不思議だね。」
「うん。どうしても知りたいです。分かりたいです。さわっても平気ですか。」
「あっ! 分かった。モンタ博士は知っているんですね。この油みたいなものの正体が分かっているんですね。わたしたちに話したくてしょうがないのですね。」
「ピンポーン。そのとおり。この油はね、昔からモンタ博士も何かなと気になっていてね、調べようと思っても、なかなかそのチャンスが無かったんだ。」
「それで、この油みたいなものは、何なのですか。」
「油に見えるけど、正しくは『油のまく』のような物質といったほうがいいかもしれないね。」
「たしかに『まく』ですね。それで、その正体は?」
「鉄バクテリアがふえたものなんだよ。」
「鉄バクテリア? 初めて聞く名前です。」
「わき水などにふくまれている鉄分と言ったらいいかな。初めは無色で、水にとけているんだけど、地上に流れてきて、空気に触れると、鉄バクテリアによって酸化されて褐色の水にとけない鉄(繁殖した鉄バクテリア)に変化するんだよ。
「ふーむ。ちょっとむずかしくなってきたけど、がまんして聞きます。」
「鉄バクテリアというのはね、土の中の細菌でどこにでもあるものなんだ。水の動きがほとんどない、たまり水のような所では、水面に油のような『まく』をはった状態になることがあるんだ。」
「ふーむ。それで、どうなるのですか。」
「『ギラ』とか『キラ』と呼ばれることもあるけど、もちろん油ではないので、油くさくないし、人間とかにはまったくの無害だから、安心していいよ。」
「毒でもなんでもないんですね。さわってもだいじょうぶなんですね。」
「それを早く言ってください。モンタ博士!」
日本地下水学会とは
1000人もいる大きな学会であり、地下水についての理学・工学・農学などの幅広い分野の研究者や技術者がいて、地下水に関する総合的な学問の発展や、地下水の開発・保全に関する研究・技術の普及を目的とした学会である。上記の内容は日本地下水学会のHPから参考にしたことを付記しておく。