東書キッズ

１．身近（みぢか）な自然（しぜん）の観察（かんさつ）
　（3）季節（きせつ）と生物（せいぶつ）
２．植物（しょくぶつ）の世界（せかい）
　（11）おいしい植物（しょくぶつ）の世界（せかい）

（653）春（はる）の山菜採（さんさいと）り、てくてく・その３　タチシオデ

（セ　リ）　　　　　　　　（コ　ゴ　ミ）

「モンタ博士（はかせ）！この前（まえ）のヤブカンゾウやコゴミは、とてもおいしかったですね。」

「そうだね。本当（ほんとう）にうまかったね。ヤブカンゾウは甘（あま）みがあるし、コゴミは、マヨネーズがよく合（あ）うね。でも、山菜（さんさい）採（と）りって、ちょっとね⋯⋯。」

「ちょっとって、何（なに）か問題（もんだい）でもあるのかな。」

「そうじゃないよ。ヤブカンゾウを採（と）るには同（おな）じしせいをするでしょ。ぼくみたいに子供（こども）はいいけど、お年（とし）寄（よ）りや腰（こし）の悪（わる）い人（ひと）には、ちょっと大変（たいへん）ではないかなと思（おも）うんだよね。」

「そうね。わたしもあまり気（き）にしないけど、コゴミやノビルを採（と）るときに、手（て）がよごれていやがる人（ひと）がいるかもしれないね。」

「そうだね。でも、おいしいものが食（た）べられるんだから、少（すこ）しぐらいは、がまんしなくてはならないのかな。」

「まあまあ、そういうこともあるだろうけどね。山（やま）のアスパラガスと呼（よ）ばれる山菜（さんさい）ならば、腰（こし）もいたくならないし、手（て）もよごれる心配（しんぱい）はないよ。ともかく、立（た）ったままで、かんたんに採（と）れて、その上（うえ）、味（あじ）もバツグンにうまいんだよ。『良（よ）いとこづくめの山菜』だよ。」

「えっ！そんな山菜（さんさい）があるんですか。」

「山（やま）のアスパラガスって、何（なん）ですか。」

「それはね、幻（まぼろし）の山菜（さんさい）とも呼（よ）ばれるものなんだ。」

「幻（まぼろし）の山菜（さんさい）ですか。ますます気（き）になりますね。どんな植物（しょくぶつ）なんですか。」

「正式（せいしき）な名前（なまえ）は、タチシオデという植物（しょくぶつ）なんだ。とても栄養価（えいようか）が高（たか）くてね、ビタミンＣ（シー）や食物（しょくもつ）繊維（せんい）が多（おお）く、美肌（びはだ）効果（こうか）や疲労（ひろう）回復（かいふく）にもいいんだ。」

「そんな山菜（さんさい）があるのですか。」

「一か所（いっかしょ）にたくさんないので、幻（まぼろし）の山菜（さんさい）と言（い）われているけど、モンタ博士（はかせ）のおうちの近（ちか）くには、かなりあるんだよ。つる性（せい）の植物（しょくぶつ）で、ほかの植物にまきつきながら、２ｍ（メートル）ぐらいまで成長（せいちょう）する植物でね。新芽（しんめ）が伸（の）びる所（ところ）（上（うえ）の写真（しゃしん）の矢印（やじるし）の部分（ぶぶん））を採（と）るんだよ。芽（め）が伸びる様子（ようす）や食感（しょっかん）がアスパラガスに似（に）ているので『山（やま）アスパラ』とも言うんだよ。」

「『良（よ）いとこづくめの山菜（さんさい）』というのは、どうしてですか。」

「てくてく歩（ある）きながら採（と）ればいいんだ。新芽（しんめ）はまっすぐに伸（の）びるから、立（た）ったままで手（て）を出（だ）せばいいんだ。腰（こし）もいたくならない、手もよごれない、一度（いちど）にたくさん採れる、味（あじ）も最高（さいこう）と４拍子（びょうし）そろった山菜（さんさい）だね。」

「良（よ）いとこづくめとか、山（やま）アスパラとか、４拍子（びょうし）そろったとか、幻（まぼろし）の山菜（さんさい）とか、今（いま）すぐにでも採（と）りに行（い）きたいです。」

「ぼくも採（と）りに行（い）きたいです。」

「それでは、今（いま）からみんなで行（い）こう！」

　⋯⋯というわけで、タチシオデを採（と）りに近（ちか）くの山（やま）に行（い）き、たくさん採集（さいしゅう）できたとさ。

「いつものように水（みず）あらいをしてから、お湯（ゆ）でゆがいて⋯⋯。」

「それから、お湯（ゆ）をこぼしてから、冷（つめ）たい水（みず）で冷（ひ）やして、できあがり！」

「さあ！おしょうゆとおかかをパラパラとやって、いただきまーす。あっ！そうだ。コゴミも少（すこ）し残（のこ）っていたから、いっしょに食（た）べよう。」

「うわあー。タチシオデって、とてもおいしいです。アスパラガスに似（に）ている感（かん）じがします。」

「ほんとうにうまくて、うれしいです。幻（まぼろし）の山菜（さんさい）！良（よ）いとこづくめの４拍子（びょうし）そろった山菜だ！タチシオデ！最高（さいこう）！」

健康や美容を気にしている人にお薦め！

　食物繊維には便秘改善効果があり、漢方でも血行促進、通経、関節炎に用いられている。細かく刻み自然乾燥させた根や茎を水で煎じて使うこともある。上記ではタチシオデについて記してあるが、同じ属のシオデという植物も同様にお薦めである。両種とも花は小さく緑色であまり目立たないが、花弁が反り返って球状の形をしているのが特徴的である。花の時期はタチシオデが梅雨の頃で、シオデは夏に開花する。なお、葉での分類のポイントは、葉裏に光沢があるのがシオデで、無いのがタチシオデである。なお、どちらも美味である。