東書キッズ

２．植物（しょくぶつ）の世界（せかい）
　（3）被子植物（ひししょくぶつ）（双子葉類（そうしようるい））のなかま
　（11）おいしい植物（しょくぶつ）の世界（せかい）
　（13）植物（しょくぶつ）で健康（けんこう）シリーズ！薬（くすり）の世界（せかい）
４．自然界（しぜんかい）のつりあい・環境保全（かんきょうほぜん）・地質（ちしつ）と地形（ちけい）の世界（せかい）
　（4）自然（しぜん）のめぐみ

（634）アシタバ

「あっ！モンタ博士（はかせ）だ。走（はし）っているよ。」

「本当（ほんとう）だ。すごく速（はや）いよ。モンタ博士（はかせ）！マラソン選手（せんしゅ）みたいですね。」

「走（はし）ると、とても気（き）持（も）ちいいよ。」

「モンタ博士（はかせ）は、2022横浜（よこはま）マラソンに出場（しゅつじょう）したんですよね。」

「そうだよ。そして、今（いま）は2024東京（とうきょう）マラソンに向（む）けて特訓中（とっくんちゅう）ということなんだ。二人（ふたり）もいっしょに走（はし）ろうよ。」

「はい、分（わ）かりました。ところで、モンタ博士（はかせ）！手（て）に何（なに）かもっていますが、植物（しょくぶつ）採集（さいしゅう）しながら走（はし）っているのですか。」

「あっ！これはね、アシタバと言（い）うんだ。植物（しょくぶつ）採集（さいしゅう）ではなくて、食物（しょくもつ）採集（さいしゅう）と言（い）った方（ほう）がいいかな。」

「食物（しょくもつ）採集（さいしゅう）ですか。初（はじ）めて聞（き）きますが⋯⋯。」

「まあ、何（なん）というかな、山菜（さんさい）取（と）りと同（おな）じようなものだね、でも、山菜取りって、季節（きせつ）によっていろいろと取（と）れるものがちがうでしょ。でも、このアシタバは、ほぼ一年中（いちねんじゅう）、いつでも取れるんだ。」

「アシタバ？聞（き）いたことのない名前（なまえ）ですが⋯⋯。」

「よくぞ聞（き）いてくれたね。それではアシタバの説明（せつめい）をしよう！」

「よろしくお願（ねが）いします。」

「まず、アシタバの分布（ぶんぷ）だけど、千葉（ちば）、神奈川（かながわ）、伊豆（いず）、伊豆（いず）七島（しちとう）や本州（ほんしゅう）南部（なんぶ）の海岸（かいがん）砂地（すなち）に分布するんだ。」

「えっ！モンタ博士（はかせ）のおうちは東京（とうきょう）の八王子市（はちおうじし）ですよね。」

「そうなんだ。八王子（はちおうじ）のどこにでもあるのではないけど、ある所（ところ）に行（い）くとたくさんあるんだよ。」

「どんな花（はな）がさくのですか？」

「茎（くき）は高（たか）さが１ｍ（メートル）にもなり、夏（なつ）から秋（あき）に小（ちい）さい黄色（きいろ）の花（はな）をたくさんさかせ、秋おそくに、だ円形（えんけい）のうすく小さな実（み）をつけるんだ。」

「どうやって食（た）べるのですか？」

「いろいろな食（た）べ方（かた）があってね。葉（は）を乾（かん）燥（そう）させてお茶（ちゃ）みたいに飲（の）んだりしてもいいけど、モンタ博士（はかせ）は、毎朝（まいあさ）のサラダに細（こま）かく切（き）って入（い）れているんだ。ちょっと苦味（にがみ）があるけど、それもいいもんだよ。」

「アシタバという名前（なまえ）は、ちょっと変（か）わっているように思（おも）うのですが⋯⋯。」

「そうだね。聞（き）きなれないとそう思（おも）うね。名前（なまえ）の由来（ゆらい）は、朝（あさ）のおかずにつんだのに、翌朝（よくあさ）には同（おな）じ場所（ばしょ）からもう新（あたら）しい葉（は）が伸（の）びるくらいに、生命力（せいめいりょく）があるので、アシタバとなったんだ。漢字（かんじ）で書（か）くとね、『明日（あした）葉（ば）』だよ。」

「なるほど、覚（おぼ）えやすい名前（なまえ）ですね。」

「アシタバは、体（からだ）にとても良（よ）くてね、そういうものを薬用（やくよう）植物（しょくぶつ）と言（い）うんだよ。」

「つまり、薬用（やくよう）植物（しょくぶつ）の『やく』は『薬（くすり）』ということですね。」

「アシタバは健康（けんこう）にとてもいいのだから、ぼくのおうちにもほしいです。」

「そうだね。海岸（かいがん）などに行（い）った時（とき）に、根（ね）つきのものをちょっとだけ採集（さいしゅう）するのもいいよ。どこにでもあるものなので、採集（さいしゅう）禁止（きんし）にはなっていないよ。」

「とって来（き）てからどうすればいいのですか。」

「おうちに庭（にわ）に植（う）えれば、いつでも食（た）べられて便利（べんり）だよ。下（した）の写真（しゃしん）は、モンタ博士（はかせ）のおうちの『アシタバ畑（ばたけ）』だよ。」

「モンタ博士（はかせ）！アシタバの分（わ）かりやすい特徴（とくちょう）とかはありますか。」

「それから、似（に）ている植（しょく）物（ぶつ）とかはありますか。」

「そうだね。オー君（くん）のいう特徴（とくちょう）だけど、茎（くき）や葉（は）をちぎると黄色（きいろ）い汁（しる）がでるので、分（わ）かりやすいよ。それから、花（はな）ちゃんの他（ほか）の似（に）た植（しょく）物（ぶつ）というのでは、ハマウドというのがあるよ。」

「聞（き）いたことがあるような、無（な）いような感（かん）じですが⋯⋯。」

「形態的（けいたいてき）・分布的（ぶんぷてき）に説明（せつめい）すると、つまり、形（かたち）や生育（せいいく）場所（ばしょ）と言（い）うことだけど、同（おな）じ仲（なか）間（ま）のハマウドという植物（しょくぶつ）が海岸（かいがん）近（ちか）くに生（は）えているけど、アシタバの花（はな）は黄色（きいろ）で葉（は）に光沢（こうたく）がないのに対（たい）し、ハマウドは白（しろ）い花（はな）を咲（さ）かせ、葉に光沢があるというのがちがいだね。」

「そうなんですか。ハマウドという植物（しょくぶつ）もいつか見（み）てみたいです。」

「うーん。モンタ博士（はかせ）！アシタバって、ひょっとしてニンジンやパセリなどと同（おな）じ仲（なか）間（ま）ですか。」

「そうだよ。アシタバ、ニンジン、パセリなど、みんなセリ科（か）の植物（しょくぶつ）だよ。」

「うーん。セリ科（か）か⋯⋯セリ科なんだ。ということは⋯⋯うーん。」

「どうしたの。何（なに）をさっきからうなったりしているの。」

「そうだ。アシタバもセリ科（か）ならば、きっと来（く）るぞ。やってくるぞ。よし、オー君（くん）のアシタバキアゲハゲット！よびこみ実験（じっけん）をするぞ。さあ！アシタバを取（と）りに行（い）くぞ。レッツ・ゴ―！」

　⋯⋯ということで、オー君（くん）は、アシタバ取（と）りに走（はし）って行（い）ったとさ⋯⋯。

「えっ！どういうことですか。モンタ博士（はかせ）！」

「つまりね、キアゲハというチョウは、セリ科（か）の植物（しょくぶつ）を食（しょく）草（そう）にしているんだ。それで、アシタバもセリ科（か）だから、キアゲハを育（そだ）てられると考（かんが）えたんだろうね。思（おも）いついたら、すぐに行動（こうどう）！すばらしいね。オー君（くん）の実験（じっけん）結果（けっか）を楽（たの）しみにしていようね。」

アシタバの成分（とても難しい専門的なお話）

　アシタバの高い栄養は、古書に「神秘の植物」と記載があるほど、古くから知られている。研究によると、アシタバの茎と葉にはビタミンＫをはじめとする各種ビタミン、βカロテン、カリウム、ゲルマニウム、亜鉛、食物繊維、16種のアミノ酸が含まれているのが分かっている。これらの栄養を毎日摂取することで、生活習慣病など多くの人を悩ませている病気に効くとされている。以下、高血圧、低血圧、糖尿病、脳卒中、頭痛や肩こり、リウマチ、更年期障害などにも効果がある。なお、副作用が一切ないというのも安心して食べられる薬用植物である。
　茎や葉には、イソクエルシトリン、ルテオリン等の配糖体が、根にはアンゲリカ酸、ベルガプテンなどを含む。このうち黄色い汁の主要成分がイソクエルシトリンで、利尿、緩下（緩やかに下る：便秘薬、数グラム程度を投与すると軟便となり、排便回数が増加する）、毛細血管強化などの作用がある。乾燥させた葉を熱湯に注ぐか、土瓶で煎じてお茶がわりに飲む。一日量20～30グラム。また、青い葉をジューサーにかけて青汁を作り、一日100cc飲んでもよい。