2.植物の世界
(6)種子を作らない植物のなかま
(626)ハマキゴケ・ウチワゴケ
「うわあー。石のかべに何か緑色の物がいっぱいついているようですね。」
「何だろうな。虫なら動きそうだけど動いてないみたいだね。植物かな、でも、きれいなお花とかは咲いてないみたいだな。」
「もっと近くで自分の目で見てごらん。さわってみてもだいじょうぶだよ。」
「あっ! これはコケのようですね。」
「さわってみたけど、いたくないよ。ちょっとフワフワというか、ペトペトというか、サワサワというか、チョコチョコというかそんな感じです。」
「なるほど、いろいろな感想があっていいんだよ。では、色はどんなかな。」
「こい緑色もあれば、黄緑色もあります。」
「黒っぽいのもあるし、白っぽいのもあるよ。いろいろあるんだな。」
「それでは、今からある実験を行います。ここにスプレーボトルがあり、中には水が入っているだけだよ。これをコケに向けてシュシュシュのシュとやると、どんな変化があるかな。」
「何か変化があるのかな。楽しみだな。」
「しっかりと見ていればいいんですね。」
「それでは、シュシュシュのシュとやるよ。でも、その前に、この右と左にあるコケは同じものだね。その片方だけをシュシュシュのシュするよ。」
「そうか、左と右を見比べればいいんだな。モンタ博士、お願いします。」
「それでは、シュシュシュのシュとやるよ。でも、その前に、ここに虫メガネがあるので見てみよう! コケってどんな感じかな。」
「何だか色は黒っぽいですね。暗い森のようですね。」
「それから、葉っぱがまいている感じがしますが⋯⋯。モンタ博士! 早くシュシュシュのシュとやってください。」
「では、シュシュシュのシュ! だ。どうなったかな。何か変化があったかな。」
「急に葉の色が変わりました。これはおどろきです。」
「葉がまいている感じでしたが、葉が開いたようです。すごいです。」
「これはね、ハマキゴケというものなんだ。名前どおりに、葉っぱが水を吸うとね、まいていた葉が広がるんだよ。」
「そうか、植物は葉から水を吸うんですね。」
「ちょっと待って、葉から水を吸うっておかしくないですか。」
「そうだね。根は体を支える役目もあって、ふつう、植物は根から水や栄養分を吸って成長していくでしょ。ところが⋯⋯。」
「ところがどうしたのですか。」
「コケ植物は、葉の表面から水を吸い、根はただ支えるだけの役目なんだよ。」
「コケって、本当にすごいですね。」
「それでは、もう一つ紹介しよう。これはね、『ウチワゴケ』という植物なんだけど、これもシュシュシュのシュをすると、変化するよ。さて、どうなるかな。想像してごらん。」
「何だか、ボロボロで切れている感じで、かわいているようですね。何だか、おかかみたいな感じがするなあ。」
「それでは、シュシュシュのシュだ。」
「あまり変化がないようですね。」
「すぐに何か、目に見えるような変化が見たいけど⋯⋯、ダメですね。」
「まあ、そういうこともあるさ。しばらくしてから、またもどって見よう。」
⋯⋯ということで、それから10分後、さて、どのように変化しただろう⋯⋯。
「あれ? 開いているわ。」
「本当だ。前とぜんぜんちがうな。すごい変化ですね。でも、よく見ると何かの形に似ているなあ。」
「そうだね。さっき、ちょっとお話ししたけど、思い出したかな。」
「ウチワのように開いているわ。それで、ウチワゴケなのですね。」
「ウチワというよりも、扇子と言った方がピッタリかもね。そうだ。扇子草にしよう。モンタ博士、これもコケという名前がついているので、コケ植物なんですね。」
「ところがどっこい、これは、コケ植物ではなくて、シダ植物なんだよ。」⋯⋯
身近なコケ植物
上記のウチワゴケや、ムラサキサギゴケ、モウセンゴケ、クラマゴケなど、コケ植物でないものもかなりあるが、一般的にコケというと、センタイ類と地衣類などを指す場合が多いようである。日本には、センタイ類は約2000種が知られ、地衣類も約2000種が分布しているといわれている。それら全てを知ることは不可能である。そこで、身近なコケからチャレンジしてみるのがよいと思う。めずらしいものハンターではなく、上記のような近くのコンクリートの壁に見られるコケや身近な散歩道の土の上にあるコケ、さらに、樹幹に生えるコケなどを見ていくことをお勧めする。
なお、今回のハマキゴケの近くには、ギンゴケ、チュウゴクネジクチゴケ、チヂレゴケ、ヒロハツヤゴケなどがよく見られた。