1.身近な自然の観察
(4)生物と日本人のかかわり
2.植物の世界
(4)被子植物(単子葉類)のなかま
4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(4)自然のめぐみ
(617)よしず作りにチャレンジ!
「ねえ、花ちゃん・オー君、今から2枚の写真を見せるから、何がうつっていると思うかな。どんな感じかを教えてほしいんだ。」
「はい。分かりました。」
「はい。喜んで! どんな写真でしょうか。楽しみです。」
「何だろうな。ぼくにはさっぱり分かりません。」
「私も自信がありません。ただ、イネ科の植物、それもとても背の高いもののような気がしますが、それ以上は分かりません。」
「まあ、しょうがないか。写真(1)は、モンタ博士のおうちの近くのある湿地(いつも水がありしめっている所)に生えている植物で、ヨシというものだよ。それから、写真(2)は、同じくモンタ博士のおうちの前の川に生えている植物で、ツルヨシというものなんだ。分からなくて当然だよね。」
「花らしいものもないし、ちんぷんかんぷんです。それにヨシとかツルヨシとか、聞いたことがありません。」
「そうだよね。みんなにはあまり縁のない植物だろうね。」
「それでは、モンタ博士、どうしてヨシとかツルヨシの写真を撮ったのですか。」
「その前に、もう一つ聞くけど、『よしず』というのは何か分かるかな。」
「残念ながら、分かりません。」
「同じく、まったく分かりません。宇宙人の言葉ですか?」
「そうか、そこから話をしなくちゃいけないんだな。時代の流れだね。あっ! 思い出した、最近、こんなものを見たことあるかな。下の写真を見てごらん。」
「あっ! 見たことあります。知っています。」
「あっ! これと同じようなやつ、ぼくの家にもあります。日よけに使うものですね。」
「そうだよ。今ではシェードというものなんだ。なんかおしゃれな感じがしていいよね。最近、とてもはやっているらしいよ。」
「そのシェードと、はじめの写真と何か関係があるのですか。」
「そのシェードというものは、プラスチックや化学せんい素材などでできているんだけど、日本では、かなり昔から、自然に生えている植物を使って、そのシェードのようなものを作っていたんだよ。」
「あっ! 分かった。その自然に生えている天然素材というのが、例の写真の植物なんですね。」
「そのとおりだよ。それをね、『よしず』というんだよ。」
「つまり、暑い夏を乗り切るために、その『よしず』を作り利用してきたということなんですね。でも、どんな効果があるんだろう。」
「暑い夏にはエアコンや扇風機などを一日中使うこともあるね。でもね、健康面や環境、電気代などを考えると、なるべく冷房は使いたくないね。」
「電気代の節約になるし、エネルギー資源は大切にしなくちゃいけないもんね。」
「そうね。そのよしずというものを使えば、外から見えないし、UVカットにもなるわ。」
「何なの。そのUVカットって?」
「太陽の光には、人間の体に悪い影響をあたえる紫外線というものがあるのね、それを防ぐことができるということですよね。モンタ博士。」
「そうだね。そのとおり。むずかしいことを知っていて感心だね。すだれは、日光はさえぎるけど、風通しはいいんだね。使う前に水をかけることによって、部屋の中に入る風を2度ほど下げるとも言われているんだよ。」
「すごいですね。すだれって。感心してしまいます。」
「そうだね。すだれは、日本の夏の風物詩でもあるんだよ。つまり、湿度の高い日本の夏を天然のすずしい風で気持ちよくすごすことができる、自然素材のブラインドというわけなんだね。」
「それで、そのよしずというのは、どこで売っているのですか。」
「ディスカウントショップとかにあるよ。工場で作るからそんなに高くないよ。」
「へえー。そうなんですか。それじゃ、今度の夏におうちの人と買いに行こうかな。」
「そうだね。でもね、琵琶湖のよしず(近江すだれ)というものは、300年以上も前から職人さんが手作りで作っているそうでね、180cm×180cmでは、13,200円もするそうなんだ。」
「なるほど、手作りで良いものほど高価なのですね。分かる気がします。」
「そこでだ、そこでね、モンタ博士は考えたんだ。よしずというものを素人でも作れるのではないかとね。つまり、初めの写真にあったヨシとツルヨシを100本ずつ採集してきてね、実際にタコ糸を使って作ってみたんだよ。」
「えっ! 本当ですか。」
「ヨシとツルヨシの両方で作ったのは、何か意味があるのですか。」
「ヨシは
沼や
湿地などにあり、とても
背が
高くなるんだ。ツルヨシというのは、
川に
生えているもので、それほど高くはない。といっても3
mは
超すかな。それでね、ヨシとツルヨシでどっちがじょうぶなのかと
思ってね、それで、
作ったというわけさ。」
「大変な作業でしたね。かなり時間もかかったでしょうね。」
「そうだね。刈るのに1時間、写真のようにするには、4~5時間はかかったかな。でも、これはモンタ博士特製のマイよしずだからね、夏になったら大切に使おうと思っているんだよ。」
ヨシの効果(よしずだけではない、河川浄化の効果もあり、さらに生態系の維持もする)
ヨシという植物は、川の水をきれいにするというのは本当である。ヨシ群落には水をきれいにする効果があり、まず、ヨシによって水の流れを弱くして水の汚れを鎮める働きがある。次にヨシの水中の茎につく様々な微生物や、ヨシ群落の土中の微生物が水の汚れを分解する働きがある。さらに、ヨシには水中の窒素やリンを養分として吸い取る働きもあるということだ。
また、魚の住むところとしての役割があり、ヨシ群落では、多くの多様な魚が集まり産卵し、ふ化した稚魚は隠れ場や餌場として成長する。つまり、ヨシ群落は魚や貝の宝庫であるということだ。野鳥のすみかとしてヨシ群落に多く集まる。このように、ヨシ群落は水環境だけでなく、生態系を維持する上でも大きく関わりを持っている。