2.植物の世界
(11)おいしい植物の世界
4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(4)自然のめぐみ
(610)マテバシイのドングリクッキー
「あっ! モンタ博士! どうしたのですか。何が始まるのですか。」
「今日はね、モンタ博士のクッキング教室だよ。マテバシイというドングリが食べられるのは知っているよね。それでね、今日はクッキー作りにチャレンジするんだよ。」
「すごいですね。パチパチパチ! どうやって作るのですか。」
「まず、150個くらいドングリを拾ってきて、それを(1)の写真のように、ドングリの皮をむくんだ。これがけっこう大変な仕事なんだよ。」
「かんたんには割れないのですか。」
「マテバシイというのは、学名でLithocarpus edulis、リソカルプス、つまりLithoは『固い』で、carpusは『実』という意味でね。edulisは『食べられる』というわけさ。とても固いので、手では無理なんだ。それでペンチを使うんだよ。」
「1つ1つむくのは大変だけど、がんばったんですね。」
「それでできたのが、(2)の写真ですね。」
「そうだよ。次にドングリをつぶすんだけど、これもまたかたくてね、すりこぎでも大変なので、これもペンチを使ったね。写真(3)だよ。」
「モンタ博士、本当にご苦労さまでしたね。」
「くだいて細かくしてから、さらにすりこぎですりつぶし、網のザルでふるいにかけてさらに細かくしたのが、下の写真(4)だよ。」
「ずいぶんと細かくなりましたね。」
「そうだよ。自分でもよくがんばったと思うよ。こたつの上でやったけど、あちこちドングリが飛び散ったり、悪戦苦闘したことがよく分かるでしょ。」
「どのくらい時間がかかったのですか。」
「ドングリの外の皮を取るのに1時間。それから細かくすりつぶすのに1時間くらいかな。ともかく大変でした。」
「どんなことを考えながらやったのですか。」
「そうだね。縄文人になりきったという感じかな。昔の人は、テレビも無ければパソコンも無し、本を読むこともなく、ひたすらやり続けたんだろうね。」
「縄文人はすごいですね。」
「そうだね。遊ぶひまもなかったのかもね。ともかく食べないと生きていけないんだからね。すごいよね。大人もやったとは思うけど、子供もお手伝いをしたんだろうね。」
「昔の人はえらいですね。ところで、粉にしたドングリをどうやって食べたのですか。」
「レシピとかあるんですか。」
「ネット情報も少し見たけど、以下のようなレシピで作ったよ。」
モンタ博士の
ドングリクッキーレシピ
1:材料 マテバシイ 150粒ほど
2:準備 ドングリの粉 140g
やまいも 40g
たまご 1個
塩 少々
砂糖 (無し・大さじ1・大さじ2)
3:
方法 砂糖の
量を
変えて
作成。
オーブンは190度で20分。
「やまいもを入れたんですね。」
「つなぎに入れるといいみたいだよ。」
「砂糖の量をいろいろ変えたんですね。」
「どのくらいがいいか分かなくてね、どんな味か、お楽しみというわけさ。」
「それで、どんな味だったのですか。」
「そうだね。自分で苦労して何時間もかけて作ったクッキーだからね。どれもこれもおいしかったね。でも、それではあまりにも自分だけの感想なので、ある時、試食会をしたんだよ。」
「試食会ですか。どうやったんですか。」
「モンタ博士のお友達の植物研究仲間と、観察会をした日のお昼ご飯の時に、みんなに食べてもらったんだ。」
「その結果はどうだったのですか?」
「それでね、みんなおいしいと言ってくれてね。アンケートをとったら、砂糖未使用がいいと言ってくれた人が約20%、大さじ1杯の人が30%、大さじ2杯の人が40%という結果になったんだ。」
「それはよかったですね。」
「今回はマテバシイを使ったけど、スダジイでもおいしいクッキーができるようだよ。次はみんなでいっしょに作ろうか。」
「うわあー! うれしいな。楽しみにしています。」
※文末に、大石好子さんというグルメリポーターからの感想文があります。
マテバシイから一言
縄文時代の頃はね、あちこちの子供から大人まで、ぼく(マテバシイ)のことを大切に扱ってくれてね。神の実とか、最高栄養保存食とか、身近な栄養源とか、いろいろとほめたたえられてね。それはそれはいい時代だったんだよ。ところがね、ぼくよりも美味しいものとか、手間も時間もかからずに簡単に食べられるものとかを人間様が発見・発明してからね、ちょっと人気ダウンしたかなと、かなり落ち込んでいたのは事実だよ。でもね、今回ね、このように、ぼくのことをみんなに丁寧に紹介してくれて、感謝感激だね。本当にモンタ博士には心からお礼を言いたいね。
ところで、ぼくは、公園などあちこちで植えられているからね、これからも仲良く頼むね。ちなみに、ぼくの学名はLithocarpus edulisというんだよ。その意味はね、Lithoは石ように固い、carpusは実で、edulisは食べられるということなんだ。石のように固いので、ドングリ独楽なんか作るにもいいんだよ。食べたり遊んだり、いろいろと役立つドングリなので、これからもよろしくね。
大石好子さんから食レポ
感想文:
おいしいもの大好きなので、前にモンタ博士から教えていただいたスダジイのとりこになって、近くの神社で拾わせていただいて(食べて)いましたが、今回はマテバシイのクッキー! ざくざくした触感は、まるでアーモンドクッキーのようですが、油分が多過ぎないのかあっさりした味わいでした。だからなのかしら、私はお砂糖なしのシンプルな味のクッキーが一番好きでした。作るのには時間がかかって大変だっただろうな~と思っていましたが、観察会では山のようにあったクッキーがあっという間になくなってしまうくらい、本当においしかったです。いつも見かけるマテバシイのドングリだということにみんなでびっくりしながらも、ニコニコ笑顔でリスのようにクッキーをほおばりながら感想を伝え合ったのも楽しかったです。植物は見たりさわったりするだけでなく、食べられる種類もあって、学ぶ楽しさが無限に広がっているような気がしていつもワクワクしています!