1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
(607)かんたん、30秒おし花
「うわあー! 花ちゃん! きれいなおし花だね。ちょっと見せて。」
「これは、モンタ博士といっしょに作ったのよ。いいでしょ。」
「とってもいいね。でも、どうやって作ったの。」
「花を本の間にはさんだだけよ。でも、おし花を作るには、とても時間がかかるのよ。」
「ふーん、そうなんだ。でも、時間がかかるのはどうもな⋯⋯。」
「時間はかかるけど、とてもかんたんなの。本にはさんでおけばOKよ。」
「本とかにはさんでおいても、そのうち忘れちゃうんだよな。」
「まあ、そういうこともあるね。それでは、今日はおし花のお話をしようかな。」
「よろしくお願いします。ところで、おし花をもっとかんたんに作る方法とかはないのですか。」
「まあ、そんなにあわてない、あわてない。まず、おし花というとね、昔から新聞紙などにはさんでね、その新聞紙を毎日代えたり、けっこう大変な作業なんだよ。」
「なぜ、毎日代える必要があるのですか。」
「この前は、モンタ博士がどこかから、うすい雑誌のようなものを持ってきてくれて、それで作ったと記憶しているのですが⋯⋯。」
「そうだったね。今、駅やコンビニなどにフリーペーパーというものが置いてあって、自由にもらえるものがあってね、ほんの少しだけのおし花なら、それにはさんでおくのもおすすめだね。」
「でも、それでも、時間がかかるんですよね。もっと短い時間にできる方法はないのですか。」
「そうだね。それじゃ、3分おし花はどうかな。」
「え! たった3分? まるでカップラーメンみたいですね。」
「それはね、アイロンを
使う
方法なんだよ。」
「えっ! アイロンでできるんですか。どうやるのですか。」
「アイロンの熱と重さを利用するんだよ。アイロン台の上に何枚か紙をしいてね、その間に葉や花をはさむんだ。3分はかからないかな。」
「へえー! 知らなかったです。今度やってみますね。」
「でも、アイロンはとても熱いから、気をつけてやってくださいね。」
「なるほど、そういうことですか。でも、もっと早く作りたいときはどうするのですか。」
「そうだね。それじゃ、30秒おし花はどうかな。」
「え! たった30秒? どうするんですか。」
「この方法は、モンタ博士のオリジナルではないけど、インターネットにあったものでね。実際にやってみたら、けっこううまくできるんだよ。」
「30秒おし花は、私も初耳です。どうやるのですか。」
「必要なものは、B5くらいの大きさの段ボールとキッチンペーパー、それに輪ゴムがあればOKだよ。」
「たったそれだけですか。かんたんそうでいいですね。でも、どうやるのですか。」
「下にその順序が分かる写真があるから、それを見るといいよ。つまりね。①段ボールにキッチンぺーパーをのせ、②その上に花や葉を置き、③さらに、同じようにキッチンペーパー、段ボールの順にのせ、④ゴムで閉じて、電子レンジで30秒チンで、はい! できあがりというわけさ。」
押し花・植物標本作りは、植物研究のはじめの一歩
押し花標本、押し葉標本のことを、昔は腊葉標本と呼んでいた。腊とは、干すとか干物にするとかの意味があったそうである。日本の植物分類学の父と言われる牧野富太郎は、生涯でその腊葉標本の数が50万点にものぼると言われている。現在、それらの標本は、東京都立大学にある「牧野標本館」に厳重に保管されている。私も、植物の勉強を始めた頃に、野外の植物を採集しては、新聞紙にはさみ、その後、画用紙に貼り付けたものである。ただ、保管状態が悪かったので、カビが多量に発生して全て廃棄した苦い思い出もある。
植物の葉や花は、時とともに枯れてしまうが、採集した日時や場所を記載しておけば、それは大変貴重な自然科学の学術的な資料となるのである。標本作りは、草花に『第二の命』を与えるという大切な作業であると思う。