1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(5)地質や地形の世界
(602)北アルプスてくてく散歩
「あれ? モンタ博士! これはどこの写真ですか。」
「手前は湖のようですね。後ろの山にある白いものは雪ですか。」
「そのとおり。これは北アルプスの白馬大池だよ。」
「ぼくたちをおいて、行っちゃったのですか。」
「モンタ博士の夏休み3000mの北アルプスてくてくだよ。」
「いいな、いいな。いっしょに行きたかったです。」
「7月下旬の真夏でも、とけない雪があるんだ。雪渓と言うんだよ。そのうち大きくなったら、連れてってあげよう。約束するよ。」
「これは、何という山ですか。遠くにもたくさんの高そうな山がいっぱいだ。」
「北アルプスの白馬連峰さ。とても気持ちいいてくてくだったよ。」
「岩ばっかりで、大きな木がありませんね。」
「森林限界と言ってね、高い木は育たないんだ。尾根沿いの道はながめもよく、高山植物がさきみだれ、まさに天上の楽園さ。」
「下の写真はどこなのですか。」
「日本一の高山植物てくてく散歩道だね。雪倉岳とその奥は朝日岳だよ。」
「こっちは、あまり岩がないようですね。」
「よいところに気がついたね。なだらかな山なみが続いているだろう。こういう山には、とてもめちゃくちゃステキな高山植物がいっぱいなんだ。」
「ピンクのかわいいお花は何というものですか。」
「ハクサンコザクラという、高山にさくサクラソウだよ。てくてく歩く道々一面にさく姿はたいへん美しく、すばらしく、超感動の連発だったね。」
「下のお花もきれいなお花ですね。ひょっとしてコマクサですか。」
「そのとおり。高山植物の女王とよばれるもので、あちこちにあって、足でふみつぶさないように、気をつけながらてくてくしたんだ。」
「そんなにたくさんあったんですか。ぼくも見たかったなあ。」
「この縦走コースには黒と黄色のトラロープなどもなく、とても自然に近い状態で見ることができるんだ。高山植物観察の穴場のような所だね。」
「あ! チョウもいるんですね。何という名前ですか。」
「これは、クジャクチョウといって、高山などでもよく見られるものだよ。羽に大きな目玉もようがあるのが特徴なんだ。」
「山、残雪、青い空、色とりどりの高山植物、それに、チョウまでいて、最高の夏休み、3000mの北アルプスてくてくでしたね。モンタ博士!」
「大きくなったら、きっと、ぜったい、必ず連れてってくださいね。」
「もちろんだよ。花ちゃん・オー君にも見せてあげたいな。きっと大喜びするし、感動・感激の連発まちがいなしだね。でも、高い山だから危険もあるし、もう少し大きくなったら行こうね。最後に、北アルプスのすてきな日の出を見せてあげよう!」
高山植物の宝庫・・・白馬連峰
私が高山植物に初めて出会ったのは、教員になってから数年目の夏であったと記憶しています。教師としての力量アップのために、様々な教科の勉強に励んでいました。いろいろな研修会に参加していたある夏、理科関係の先生から誘われて登った山が北アルプスの白馬岳・雪倉岳・朝日岳の縦走コースでした。それ以後、何度も日本の高山に足を運び、百名山の約7割は踏破してきましたが、一番のお薦めは、この縦走路です。高山植物の名所というと、他には南アルプスの北岳や尾瀬などが挙げられますが、何と言っても一番は、栂池・白馬大池・三国境・雪倉岳・朝日岳と私は思っています。白馬岳というのは、大雪渓から登るルートが一般的ですが、登山者も多く、黒と黄色のロープ越しに高山植物を見るしかありませんが、上記の山はアプローチも長く、一日の歩行時間も十数時間もかかり(通常歩行時間はもっと短いが、写真を撮ったり図鑑で種名を確認したりで、いつも白馬大池を朝一番の3時、4時に出ても、朝日小屋に着くのは夕方の5時過ぎになってしまうくらい、種数・分布数・生育数もダントツで一番に挙げられます)、過去に4回も歩きましたが、何度歩いても素晴らしい所です。まだ行ったことのない方はぜひ訪れて高山植物の美しさを存分に堪能してください。