1.身近な自然の観察
(4)生物と日本人のかかわり
2.植物の世界
(2)葉・茎・根のつくりとはたらき
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(595)クワの木の樹皮
「あれあれ? これはどこかの川のようですね。」
「遠くには,高い山も見えますね。どこなんでしょう。」
「ここはね,モンタ博士のおうちの前の川だよ。」
「へえー。モンタ博士は,こういうところに住んでいるのですね。」
「そうだよ。かっこよく言うと,リバーサイド。または,川っぷちともいうね。」
「何という川なんですか。」
「川口川といいます。上から読んでも下から読んでも同じだね。」
「あまり聞かない川の名前ですが・・・。」
「多摩川という有名な川の支流の,浅川という川の支流の川口川というのさ。ハヤという魚や,川エビもたくさんいるし,カワセミというきれいな鳥も見ることができるんだ。さらに,遠くには大岳山や御岳山も見られる最高の所だよ。」
「写真には,木もあるようですが。」
「クワの木だよ。クワというのは,カイコのエサになるものだよ。八王子は桑の都といわれていてね,絹織物で有名な所なんだよ。」
「カイコで思い出しましたが,カイコの原種の『クワゴ』については,以前モンタ博士の『てくてく自然散歩』でもありましたね。」
「今日は,クワゴについてのお話ではないのですね。」
「今日は,クワ,そのものについてのお話だよ。さわったり,ながめたり,いろいろとやってごらん。何か気がつくことはないかな。」
「普通の枝の感じですね。どうということないですね。」
「折ったり,引っぱったりしてごらん。どうなるかな。」
「あれあれ? 枝を折っても・・・樹皮がついたままだぞ。引っぱっても,なかなか切れないぞ。とってもじょうぶだぞ。」
「そうだ。カラムシもこんな感じになりますね。カラムシは草のから(茎)を蒸して,それで,織物にするんですね。カラムシ織というのですね。」
「そうだね。よく思い出したね。」
「そうだ。クワの樹皮だけを集めれば,丈夫なロープになるぞ。やってみよう。」
「いっしょにやりましょう。えい! えい! えい! と,枝を折って樹皮を集めれば,うわー! できあがり。クワの丈夫なロープのできあがりです。」
「モンタ博士! このロープはずうっと丈夫なんでしょうか。」
「そうだね。1か月,半年,1年たっても大丈夫だろうね。このクワの樹皮だけでなく,クワ科のコウゾという植物は,和紙の原料にもなるんだよ。」
「それは,どういうことですか。」
「昔,ある人がコウゾの枝を折った時に,枝の樹皮の丈夫さに気がついたんじゃないかな。そして,その樹皮を細かく砕くようにして,繊維質を残したんだよ。そして,それをトロロアオイのような,つなぎとして利用できる植物と混ぜたんだ。そして,できたのが『和紙』というさ。」
「へえー。昔の人は大発見をさらに発展させて,人々のために生活に必要なものをあれこれと作ったんですね。」
「感心ですね。ふだん見慣れている植物でも,創意工夫したのがすばらしいです。」
「昔から,人と植物とは仲良しだったんだね。」
桑と八王子
八王子には
桑の
都という
清酒があり,また,
八王子市駅前には,
全国的に
見ても
珍しい桑の
並木まである。さらに,八王子市
公立小学校のナンバースクールの
校章は,ほとんどが桑の
葉のデザインになっている。このように八王子市と桑との
関係性はとても
深いが,その
淵源は
何と
言っても
絹織物である。
最近では,クワの葉
茶やクワの
青汁なども
研究開発されてきており,八王子の
新たな
特産品として
注目も
浴びているそうである。
先日,八王子
市内をジョギングしていたところ,
元八王子町近くで,
上の
写真のよう
広い
桑畑に
遭遇した。
子供の
頃に
見た
広々とした桑畑の
景観に
驚くとともに,たいへん
懐かしい
思いがした。
近くに桑の
木を
剪定している
農家のおじさんがいたので,
話を
聞いてみると,元八王子
周辺は
畑としては
礫が
多くあまり
作物を
育てるには
向いていないが,桑の
畑としてはとてもよい
所だったとのことである。その
理由を
尋ねると,礫の
多い
場所の
方が,桑の葉が
厚くなりカイコにとってはよい
餌になるそうで,
昔,八王子の元八王子の
絹糸は,
最高級品だったとのことである。
現在,八王子市内で
養蚕をしている農家は
僅かに2
軒のみとのことであった。