1.身近な自然の観察
(1)昆虫と植物
2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(583)アザミの花の不思議
「すてきなアザミの絵ですね。これも奥様がえがかれたものですか。」
「そうだよ。いつもお願いすれば快くすぐかいてくれて感謝×∞です。」
「アザミの花なら,ぼくも見たことあるし,知っているよ。」
「でもね,アザミというのは,何種類もあるのよ。」
「ふーん。そうなんだ。それでどのくらいの種類があるの。」
「ともかくたくさんあるんですね。モンタ博士!」
「そうだね。ある本によると,日本には100種類以上もあるそうだよ。」
「え! 100種類! こりゃだめだ。ギブアップです。」
「そんなことないわ。とてもよく見かける種類は,限られているわ。」
「そうだね。アザミは地域によって,いろいろな種類があるけど,まあ,この辺では,数種類が分かればいいんじゃないかな。」
「とてもよく見かけるのは,ノアザミとノハラアザミですね。」
「そうだね。ノアザミというのは,春から夏にかけて咲くアザミでね,総苞といって,花の下の部分がねばねばになるのが特徴だよ。」
「ふーん。なんだかむずかしそうですね。」
「そんなことないけどね。あ! そうだ。アザミにはいろいろな虫たちがいっぱいやってくるんだよ。虫とアザミの関係について,勉強するといいよ。」
「え! 虫が来るの。それなら勉強したいです。」
「下の花はノハラアザミだね。いろいろなチョウやハチ,甲虫などが来ているんだよ。」
アザミとキチョウ アザミとイチモンジセセリ
アザミとハナバチ アザミとコアオハナムグリ
「うわあー。いろいろな虫がいっぱいですね。」
「そうだろう。あれこれとたくさんいて,見ていてとても楽しいね。」
「虫とアザミはなんで仲がいいのですか。」
「そんなの決まっているじゃん。花の蜜を吸うためだよ。花粉も栄養があるから,それを食べに来る虫もいるんだよ。」
「そうね,そのとおりね。でも,花は蜜や花粉を虫たちに与えるだけなのかしら。そんなんじゃ,花だけが損しないかな。」
「そうだね。大事なポイントだね。ギブ・アンド・テイクという言葉を知っているかな。与えると同時に,もらうという意味だね。アザミの花に虫が来て,花の上を虫たちが動き回ると,花は刺激を受けて,花粉を出し柱頭を押し上げるということをするんだよ。」
「何だかむずかしそうなお話ですね・・・。でも・・・。」
「でも,おもしろそうですね。何だかアザミの不思議があるみたいで,わくわくドキドキしてきました。」
「そうだろう。アザミの花の変化が分かるように,下に絵をかいたから見てね。でも,これは,モンタ博士がえがいたものだから,あまり上手ではなくてごめんね。」
「それからね,ミヤコアザミというアザミがあってね,花粉が浮かび上がってくるようすをとったから,見てごらん。(1)の写真の矢印のところを指でさわると,(2)の写真のように,少しだけど変化しているのが分かるかな。どうかな。」
(1) (2)
「それから,動画もチャレンジしたけど,今一よく分からないんだ。一番分かりやすいのは,ルーペを使って花をちょんちょんとさわってごらん。もくもく白い花粉が出てくるようすがよく見えるよ。おもしろいぞ。おどろきだよ。」
アザミの花の構造について
アザミの花は,筒状花だけの集まりで,ほっそりとした筒状花の中から,さらに細かいずいというものが伸び出してくる。雄ずいは5本だが,細長い葯(こなぶくろ)がくっつき合って一つの形となり,集葯雄ずいとよばれている。
若い筒状花では,雌しべはまだ葯の煙突の中に引っこんでいるが,この時すでに葯は内側に裂けて煙突の中にたまっている(Aの状態)。頭の部分を指でこすると,あっと言う間に,煙突の先からもくもくと出てくる。このことは,接触刺激によって,花糸が弓なりに曲がり,それで煙突が下に引っ張られるからである。煙突内の花粉は,雌しべという棒によって外に押し出されるのである(Bの状態)。煙突のてっぺんにたまった花粉がなくなったころ,雌しべが伸びてくる(Cの状態)。そして,雌しべが熟し,先が二つに割れて受粉の準備ができ,他の花の花粉をもらう用意が整うのである(Dの状態)。