3.動物の世界
(10)貝のなかま
(580)サクラガイ
「うわー! きれいな貝ですね。」
「これは,ひょっとして,さくら貝ですか。」
「そうだよ,さくら貝さ。いいだろう。すべてモンタ博士が自分で拾ってきたものだよ。さくら貝というのは,人工的には作り出せないものでね。淡く透き通ったピンク色の貝なんだ。まるで桜の花びらのように美しい貝だね。自然が作り出した芸術品といってもいいかもね。」
「えー! すごーい。私も拾いたいです。どこに行けば拾えるのですか。」
「その前に,写真をよく見てごらん。全部さくら貝だよ。」
「よく見ると,どれもこれも似ているようだけど,ちょっとちがうな。」
「そのとおり。それぞれの名前は,左上から,
(1)サクラガイ(2)カバザクラ(3)モモノハナガイ
(4)ベニガイ(5)オオモモノハナガイ
というんだよ。これらのすべての総称をさくら貝というんだよ。」
「どれもこれも,みんなとてもきれいです。どこにあるのですか。」
「モンタ博士がよく行くのは,鎌倉の由比ガ浜,材木座海岸,それから,逗子の海辺なんかでも,たくさん拾えるよ。」
「こんなきれいな貝が,ほんとうにかんたんに拾えるのですか。」
「そうだね。拾えるか拾えないかは,その時の海の状態や天候にも関係があるようだけど,いつ行っても拾えると思うよ。」
「私もぜひ拾ってみたいです。」
「さくら貝を拾うと,幸せになるといわれているんだ。それに,貝拾いというのは,目を皿のようにして一生懸命に探すので,無心になれるし,時をわすれて夢中になってしまうんだ。それがまたとっても楽しいんだよ。」
「砂浜にある時も,写真のような色をしているのですか。」
「そうだね。いい質問だね。さくら貝というのはね,とても薄い貝でね,半透明のようなんだ。それで,初めは分かりにくいけど,すぐに慣れるよ。」
「あれあれ? 写真には穴の空いたさくら貝がありますね。」
「よく気がついたね。この穴はね,ツメタガイという肉食の貝に食べられたあとなんだよ。」
「へえー。そんな貝がいるなんて知りませんでした。ところで,モンタ博士は,拾ったさくら貝をどうしているのですか。」
「そうだね。モンタ博士は,これまでに三浦半島に10回くらい行って,いろいろな貝を拾い集めてね,種類ごとに分けて,写真のように標本として持っているよ。それから,さくら貝は特にお気に入りなので,ビンに入れてかざってあるよ。」
「とってもきれいな貝なんですよね。ペンダントとかにしてもすてきですね。」
「そうだね。鎌倉には,さくら貝をアクセサリーとして製造,販売しているお店もあるから,行ってみるのもいいね。」
「花ちゃん! さくら貝をゲットしに鎌倉の海へ行こう!」
「それからね,由比ガ浜と材木座海岸の間にある滑川の河口近くに「さくら貝の歌」の碑もあるから,これも見てくるといいよ。」
さくら貝 |
説明 |
① サクラガイ |
見分け方のポイントは,貝どうしつながっている部分が,少しとがった感じになっています。また,色が濃いものが多いようです。
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② カバザクラ |
サクラガイよりも丸みを帯びた感じです。パステルカラーのようにいろいろな色があり,写真にはありませんが,オレンジ色のものもあります。
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③ モモノハナガイ |
サクラガイやカバザクラに比べて,ちょっと厚めです。型が全体的にとがっていて,縞の模様もくっきりしています。
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④ ベニガイ |
鎌倉の海岸では,2つしか見つけていません。とても珍しく美しいさくら貝です。逗子海岸に行くと,かなり多く拾うことができるという情報もあります。
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⑤ オオモモノハナガイ |
モモノハナガイをビックにしたような貝です。 大きめなので,海岸では比較的見つけやすい貝です。かなり厚いのですが,大きなものほど色が薄く白っぽいものもあります。
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※シボリザクラ |
滅多に拾うことのできないとても珍しく貴重な貝で,モンタ博士は一度も見たことがありません。まぼろしのサクラガイです。いつか見つけて拾ってみたい貝です。
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さくら貝の歌と歌碑について
昭和14
年に
作詞土屋花情,
作曲八洲秀章により
作られた
歌。作曲
家の八洲秀章は,
病で
失った
恋人の
面影を
抱いて
鎌倉に
住み,
浜辺で
見た
光景に
託して「わが
恋の
如く
悲しさやさくら
貝かたひらのみのさみしくありて」の
和歌を
作り,これを
逗子町役場に
勤める
友人の土屋花情に
示して作詞を
依頼,
曲をつけたそうです。その
後,昭和38年に
歌手の
倍賞千恵子さんが
歌い
大ヒットしました。また,
平成24
年には
歌碑が
建立され
現在に
至っています。この曲が
作られた
頃は,さくら貝が
絨毯のようにたくさん
見られたそうです。
美(うるわ)しき 桜貝ひとつ
去り行ける きみに捧げん
この貝は 去年(こぞ)の浜辺に
われ一人 拾いし貝よ
ほのぼのと うす紅染むるは
わが燃ゆる さみし血潮よ
はろばろと 通う香りは
きみ恋うる 胸のさざなみ
ああなれど わが想いは 儚(はかな)く
うつし世の 渚に果てぬ