1.身近な自然の観察
(4)生物と日本人のかかわり
4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(3)自然環境の保全
(567)雑木林づくり・鎮守の森づくり
「上に2枚の写真があるけど,何をやっているのかな。」
「そうね。左の写真は青いビニールシートの下の土を掘っている感じですね。それから,右はリアカーの土を運んで,下ろしているところのようですね。」
「これはね,国立第七小学校の100年の森計画のようすだよ。」
「100年の森計画? 何ですか? それは?」
「国立七小の裏庭は,とても広くてね,何もないので『雑木林』と『鎮守の森』をつくろうという計画だよ。」
「そんなことをしてもいいのですか。市役所の人に怒られたりしないのですか。」
「当時の佐藤一夫市長さんも応援してくれていて,子供たちのためになるなら,どんどんやっていいと許可してくれたんだよ。その後,佐藤市長は病のためにご逝去されてね,『佐藤一夫前市長顕彰の森』ということになったんだ。」
「へえー。そういうことなんですか。それで,森をつくっているのですね。」
「平成25年(2013年)10月17日に,国立七小の子供たちでクヌギやコナラなどのドングリをまいて,苗木作りに取り組んでいるのが,下の写真だよ。」
「最初の2枚の写真はどういうものですか。」
「左の写真は,保護者にお願いして多量の土をもらってね,その写真だよ。それから,その土を森の予定地に敷きつめているところが右の写真だよ。」
「それにしても壮大な計画というか,種をまいて苗木にして,それから植え付けをして,大きくなるまでには,そうとう長い年月がかかりますね。」
「そうだね。でもね,自分たちの学校に自分たちの森があるということはすばらしいことじゃないかな。」
「たとえ狭くともりっぱな森になるということですね。」
「そうだよ。将来は,武蔵野の雑木林の景観が楽しめるだろうし,また理科・生活・総合学習や環境教育の教材としての見本林となるだろうね。」
「そうか,クヌギやコナラなどの雑木林の森には,多くの昆虫,野鳥のすみかにもなるんですね。」
「そのとおりだね。生物の多様な世界の勉強にもなるし,食物連鎖などの学習にも役立つことになるだろう。平成25年にまいたドングリが苗となり,苗を植えてから今年で7年ほどたつけど,今のようすを伝える写真が下にあるから,よく見てごらん。」
「うわあー。こんなに大きくなっているんですね。」
「もうりっぱな森みたいですね。」
「そのとおりだね。先日,一番大きく成長したコナラやクヌギの幹の直径を測ったら,7cm程あったし,高さは7mくらいになっていたよ。」
「それでは,もうすぐドングリもできるということですね。」
「そうだね。そのうち,伐採してからシイタケ栽培や炭焼き体験もできるかもしれないね。それまで楽しみにしていようね。」
「ところで,モンタ博士! 下の写真はちょっとちがう感じがしますが・・・。」
「よく気がついたね。先ほどのコナラやクヌギなどは,落葉広葉樹の雑木林の森だろう。そこで,ちがう森もつくることにしたんだよ。」
「ちがう森・・・どういうことですか。」
「シイやカシなどの常緑広葉樹の森,つまり,鎮守の森づくりだね。むずかしい言葉で『潜在自然植生の森』というものだよ。」
「何だかむずかしいお話になってしまったけど,つまり,いろいろな森ができるということですね。」
「写真でも分かるように,用務主事さんが竹で囲いを作ってくれて,りっぱな森になるまでには,管理も大変だけど,皆でやっていけばいいんだよ。遠い将来に,子供たちが,この森で絵をかいたり,観察したりしてくれることを願っているよ。」
雑木林の森と鎮守の森
雑木林とは,人間が生活していくために必要な燃料として炭や薪を供給するために計画的につくられた人工の森で二次林とも呼ばれている。そこには,クヌギやコナラなどの萌芽再生力の強い樹種が選定され,15~20年ごとに伐採され利用されてきた。落ち葉は堆肥作成のために使われ,有益な物質循環を保つとともに,雑木林は四季折々の里山景観をつくり出し,自然豊かないやし空間でもある。雑木林の代表的な樹木としては,クヌギ・コナラの他にヤマザクラ・エゴノキ・シデ類などの高木,低木では,ヤマツツジ・ガマズミ・ムラサキシキブ,コゴメウツギなど様々な樹種が混在している。
また,鎮守の森とは,人間が畑作などの生産活動を一切行わない潜在的な自然の森であり,本来その地に生育していたと推測される樹種が繁茂している森であり,潜在自然植生の森と呼ばれる。なお,代表的な樹木としては,スダジイやカシ類などがあり,常緑樹に覆われた森である。現在ではほとんどその森は消滅しており,わずかに残されているのは,鎮守の森などで,大変貴重な森であるといえる。