1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
2.植物の世界
(2)葉・茎・根のつくりとはたらき
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
6.その他
(4)実験・観察・調査から
(562)クズ・カタバミのお昼寝
「やあ,みなさん! お元気ですか。今日はある葉っぱのお話だよ。上の絵は何の葉っぱか分かるかな。」
「うーん。見たことあるな。河原でよく見るよ。何と言ったかな。」
「これは,ひょっとして,『クズ』の葉っぱですか。」
「ピンポーン。そのとおりだね。クズについては,これまでにいろいろなお話をしてきたけど,今日は葉っぱのお話だよ。下に4枚の写真がありますが,何か気がつくことはないかな。撮影したのは,夏休みに入った7月23日だよ。」
「どれもみんなクズの葉ですね。場所も同じところのようですね。」
「時刻だけがちがうようですね。あ! そうか。同じ場所で時間によっての変化が分かるように写真をとったのですね。」
「そうか! こういうのを定点観察というのでしょ。」
「よく知っているね,感心だね。どんなちがいがあるかな。」
「そうですね。葉っぱが時間によって変わっているように見えます。」
「そうだね。午前5時はどんな感じかな。朝一番のようすだよ。」
「ふつうの葉っぱのようです。3枚の葉っぱがふつうに開いています。」
「朝なので,まだそれほど暑くもならない時間ですね。」
「午前10時はどんなようすかな。日差しも強く気温も30度以上あったね。」
「葉を立てている感じですね。光があまり当たらないようにしているのかな。」
「どうしてでしょう。ふつう,植物は光の差す方向に向くのに不思議ね。」
「クズの葉の裏が白いようすが,よく分かりますね。」
「葉っぱを閉じているようにも見えますね。」
「そうだね。このようすを昔から『クズのお昼寝』というそうなんだ。」
「午後4時ごろには,お日様がかくれて,曇り空になったんだ。」
「あれあれ? 今度は葉が立っていないよ。ふつうの状態ですね。」
「お昼寝はやめてしまったのでしょうか。」
「そのようだね。では,午後8時ごろはどんなかな。すっかりと夜になってね,懐中電灯を持って観察に行って写真をとったんだよ。」
「あれあれ? 葉っぱが下にたれている感じですね。」
「午前10時とは,まったく逆な感じですね。何だか,しおれてしまって元気をなくしてしまったようにも見えますが・・・。」
「そうだね。クズは一日のうちでも,朝から夜までいろいろな葉っぱの状態が見られるんだね。おもしろい特徴ですね。」
「どうして,そんなことをするのですか。」
「クズの葉っぱは,それぞれ3枚の葉の付け根に葉枕(ようちん)というものがあって,3枚の葉がそれぞれ独立して動くというわけなんだよ。葉枕のはたらきについては,下の文章を参照してください。」
「こんなことをするのは,クズの葉っぱだけなんですか。」
「マメ科の植物は,葉枕というものがあって,葉っぱが立つように閉じたり,たれたりするものが多いね。ネムノキなんかはその代表だね。オジギソウも同じだよ。それと,マメ科ではないけど,夜になると葉を閉じるというか,たらすようなものもあるんだ。それが,下の写真にもあるカタバミだよ。これも定点観察したんだ。」
「定点観察をすると,いろいろなことが分かるのですね。」
「カタバミでは,どういうことが分かったのですか。」
「そうだね。まずは,下の写真を見てごらん。」
「カタバミも午前5時ごろ,午後4時ごろには,クズと同じように葉を広げていますね。でも,午前10時ごろと午後8時ごろは同じように葉っぱを閉じているだろう。そこがクズとちがうところだね。」
「そうか,つまり,クズにしてもカタバミにしても,どっちにしても,植物は,いろいろな動きをするというものがあるということですね。」
葉枕の動き
葉枕は,手首の関節の動きに似ており,葉を上下左右に動かすしくみを持っている。これは,細胞の膨圧というものが変化することにより起こるものである。葉枕の下側の細胞が吸水して膨らむと葉は上に反り,この水分が出てしまうと縮むので,下に垂れるのである。