2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
(4)被子植物(単子葉類)のなかま
(11)おいしい植物の世界
6.その他
(4)実験・観察・調査から
(560)ヤブカンゾウ開花とレシピ
「あれ? これはどこだろうなあ。見たことある道だね。あれ? オレンジ色の花も咲いているぞ。」
「これは登校の時に通る道ですよ。きれいなお花が咲いているでしょう。これはね,夏になると咲くお花で,ヤブカンゾウというのよ。」
「オレンジ色の花っていいですね。夏休みももうすぐだ。わくわくドキドキだ。」
「夏休みには自由研究があるけど,私はそれとは別に自主研究をしているのよ。」
「え! 自主研究? すごいな花ちゃん! さすがだね。ところで,何の研究をしているのか教えてよ。」
「あのね,いつも通る道のヤブカンゾウを見ていたら,このお花はいつ咲くのかなと疑問に思ったの。そこで,早起きして,どのように花びらを広げていくかを調べたの。」
「へえー。すごいな。それでどうなったの。」
「1つのヤブカンゾウのお花を決めて,どう変化するかを写真でとったの。いろいろとおもしろいことが分かったの。花びらは,いっぺんに開くのではなくて,少しずつ広がっていくのよ。下に4枚の写真があるけど,変化していくようすがよく分かるわよ。観察したのは,2019年6月29日です。」
午前5時 午前6時30分
午前8時 午前9時30分
「モンタ博士! ヤブカンゾウの花の変化していくようすがよく分かりますね。」
「そうだね。朝5時から1時間30分ごとにしっかりと写真がとれていて,とてもすばらしい。同じ位置から撮影してあっていいね。自主研究というのもとてもいいね。そこで,さらに盛り上げるために共同研究にしようか。」
「え! 共同研究? どういうことですか。」
「あのね,モンタ博士は前々からヤブカンゾウの花について,おもしろいと思ったことがあるんだよ。それはね,どんなことかというとね,次の写真にあるから,よーく見てごらん。」
「花びらとおしべとかいろいろとありますね。」
「(1)は,ふつうのおしべだけど,(2)は,おしべみたいだけど半分は花びらみたいでしょ。それに,(3)と(4)は,花びらなのにおしべの花粉のようなものが付いているんだよ。このことから,葉っぱが花びらやがく,おしべやめしべに変化したものであり,そのとちゅうのようすがヤブカンゾウではよく観察できるということなんだよ。」
「なるほど,花びらなのに花粉が付いていたりするんですね。これからもっともっとよーくくわしく観察していきますね。」
「そうだ! ぼくも共同研究していくよ。ヤブカンゾウの根ってどうなっているんだろう。シャベルで掘って確認してきまーす。写真をとってきまーす。」
「みんなでいろいろと共同でやることは楽しいことだね。あれ! オー君がもうもどってきたよ。」
「ヤブカンゾウって,単子葉類っていうんでしょ。それで,根っこはひげ根だと思ったら大まちがい。とってもおもしろい形をしていたので,ぼくは,びっくりしました。さあ! ヤブカンゾウの根の写真を見てください。」
「すごいね。これこそ,花ちゃん・オー君・モンタ博士の共同研究だね。これからもみんなでいろいろな共同研究をやっていこう。」
ヤブカンゾウのつぶやき
私はヤブカンゾウといいます。あちこちにふつうに生えているススキノキ科の植物です。ススキノキ科というのは,APG分類体系に基づいて示されたもので,少し前まではユリ科に属していました。ユリ科は大きな科でしたが,一家離散の如くたくさんの科に分かれました。詳細はまた後日します。
ところで,ヤブカンゾウによく似た夏の花ではノカンゾウという一重の花がありますが,こちらはやや個体数が少ないようですよ。また,私の仲間にはニッコウキスゲなどがあり,とても綺麗な花を咲かせ夏の高原を彩ります。尾瀬ヶ原は最高,霧降高原も有名です。霧ヶ峰のニッコウキスゲも見事でしたが,最近は鹿が食べてしまうそうで,激減しているのが残念です。ムサシノキスゲという種もありますが,これは東京都府中市の浅間山公園という所に自生しているとてもとても珍しいものなので,一度は見てください。
お話が長くなりましたが,私は何と言っても,とても美味しいので有名です。春になり芽が出始めたころに,根の上の部分から採るんです。お湯でゆでればおひたしのできあがり。お醤油におかかでも美味だし,酢味噌和えも人気があります。野山の春の精気をいただく感じで,それはそれは美味しいわよ。まだ食べたことのない人はぜひチャレンジしてみてください。