1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
(6)天文現象・自然現象・暦
(558)木かげがすずしいわけ・樹高調べ
「今日からいよいよ5月ですね! とっても気持ちいい季節だね。」
「風薫る季節というのですね。」
「さすが花ちゃん! ステキな言葉を知っているね。どういう意味か知っているかな。」
「それは・・・分かりません。でも,何となくいい言葉ですね。」
「風薫るとは,薫風という漢語を和語化したもので,青葉若葉がふきわたるさわやかな初夏の今ごろの風の意味なんだ。ともかく,そよぐ風と,若々しい緑のさわやかさを感じる言葉だね。」
「夏に向かう前の,一番気持ちいい季節ですね。」
「そういうことで,今日は,みんなでお外に散歩ということですね。」
「そうだよ。でも,今日は少し暑いくらいだ。あ! あそこに大きな木があるね。緑の木かげに入って,少しすずしんでいこうか。」
「賛成でーす。木かげはとても気持ちいいもんね。」
「でも,モンタ博士! どうして森の中というか,木かげに入るとすずしく気持ちいいのですか。」
「さすが,花ちゃん! いい質問だね。木かげ,つまり,木にはものすごい秘密の力があるんだよ。」
「秘密の力? どういうことですか。」
「そう! 『秘密の力』とは何だろうね。みんなで今から考えてみよう!」
「まず,木は太陽の光,つまり日差しをさえぎって影を作ってくれるから,すずしくなるのかな。」
「そのとおり。直射日光というのは,熱いね。他にはないかな。木をよーく見てごらん。何か気がつかないかな。」
「そうだな。木は,幹と葉と根っこからできているけど,葉っぱが何か関係しているのかな。」
「いいぞ! いいぞ! もう少しだね。葉っぱは光合成をするけど,その他に,どんなことをしているかな。」
「うーんと! えーっと! 葉っぱから水分を蒸発させてまわりの空気を冷やしているのかもしれないね。水まきをするのと同じことかもしれないわ。」
「なるほど,いいところに気がついたね。正解でなくてもいいから,これまでの自分の経験とかいろいろと思い出してみることは大切なことだね。」
「でも,まだ何かありそうですね。」
「そうだね。それでは,ヒントを出そうか。空気というものの性質を考えるといいかもしれないよ。あたたかな空気は上に,冷たい空気は下にいくね。そうすると,上と下でどうなるかな。」
「あ! そうか! 葉で冷やされた空気は下に下がるだろう。日光であたためられた空気は上に上がるんだ。そうすると,木のまわりで空気が入れかわる。つまり,循環するかもしれないぞ。それで,木の下ではすずしいそよ風がふくんだ。」
「そのとおりだね。二人ともよく気がついたね。実際に五感で体験すれば,もっとよく分かるね。ところで,この大きなケヤキの木は高さがどのくらいなんだろうね。」
「10メートルはありますね。」
「いやもっとあるよ。15メートルはあるね。」
「そうだね。木がどのくらいの高さなのか。目測ではなくて,ある程度正確な高さを測る方法があるけど,知っているかな。」
「正確な高さですか。どうするのかな。」
「急に言われても,こまっちゃうな。何かヒントをください。」
「そうだね。これは算数の問題でもあるんだよ。二人とも算数は大好きだろう。これまで習ってきたことを応用すればいいのさ。むずかしく考えることないよ。さあ! みんなで考えよう。」
ということで,花ちゃんとオー君は,これまでの算数を思い出してみました。
「それでは,花ちゃんから発表します。まず,本物のケヤキの木はとても高いので,登ることもできないし,そんなに長いメジャーもないので,1mの定規を使います。」
「1mの定規をどのように使うのかな。」
「1mの定規をケヤキの木の横に立てます。そして,遠くから見て,1mの定規がいくつ分かで,ケヤキの高さを調べます。」
「そのとおりだね。もし1mの定規がない場合には,それに近いものを立ててもいいし,1m50㎝の人に立ってもらってもいいね。花ちゃん! 合格。」
「わーい! わーい! よかった。よかった。それで,オー君は?」
「ぼくはね,三角定規を思い出したんだ。三角定規って,二つの辺の長さが同じでしょ。それを使ったんです。」
「なるほど,どう使うのかな。」
「まず,ケヤキの木の横に大きな三角定規を置くと考えて,次に,三角定規の辺ABと辺BCは同じ長さでしょ。つまり,BCの長さを測れば,けっこう正確な数値が出ると思うのですが・・・。」
「すばらしい! ブラボー! よく考えたね。二人ともすごいね。これからも自分でいろいろと勉強してきたことをあれこれと思い出して,いろいろなことを考えたり,チャレンジしたりしよう。」
木の高さはABと同じ。三角形ABとBCは同じ。
つまり,BCの長さを測れば,木の高さも求められるということです!
メジャーがないときはどうすればいいだろう?
上の問題の場合に辺BCを測るのにメジャーが必要であるが,それがないときには,歩測で測ることはできる。足の他に,両手を伸ばすと何センチになるかとか,手の指を広げたときの大きさは何センチなのかなど,事前に知っておくことは,あれこれと便利なことがたくさんあるのではないでしょうか。