1.身近な自然の観察
(4)生物と日本人のかかわり
2.植物の世界
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(4)自然のめぐみ
(557)クロモジ
「あれ? これは何の木かな。初めて見るような木ですが・・・。」
「これはね,クロモジという木だよ。野山にふつうによく見られる木だよ。」
「クロモジというのは,初めて聞く名前ですが・・・。」
「この木の枝のところを見てごらん。どんなようすかな。」
「ふつうに緑色をしています。あ! それから,黒いシミのような点々があちこちにありますが・・・。」
「黒いシミのようなものを,昔の人は文字に見立てたんだよ。それで,黒い文字みたいなので『クロモジ』という名前にしたんだね。他にシロモジとかアオモジという植物もあるけど,関東地方よりも西や南の地方のものなんだ。」
「名前のいわれなどは分かりましたが,どうしてクロモジを紹介してくれたのですか。」
「それはね,クロモジの不思議を教えてあげようと思ったのさ。」
「クロモジの不思議って,何ですか?」
「そうだね。それでは,クロモジの枝を自分の手で折ってごらん。何か気がつくことができるかな。」
「何だか実験みたいで楽しいな。枝を折ってみると・・・あれあれ? 何か良い香りがするぞ。」
「本当ですね。とってもいいにおいですね。」
「そうだろう。それでね,このクロモジの枝を昔の人はあることに使ったんだけど,何だか分かるかな。ちょっとむずかしいかな。」
「うーん。何だろう。分からないな。」
「とってもにおいがいいですね,それに関係あるんですね。でも,分かりません。ギブアップです。」
「答えはね,楊枝(ようじ)だよ。」
「楊枝って,あの歯の間に物がはさまったときに使うものですか。」
「なるほど,これだけいいにおいなので,お口に入れてもスッキリして気持ちいいということですね。」
「そのとおりだね。昔の人は,野山にあるいろいろな物を生活に利用してきたんだね。」
「ところで,クロモジの楊枝なんて聞いたことないです。いつもおうちで使っているのは,ヒャッキンで売っている楊枝ですが。」
「そうだろう。このクロモジの楊枝というのは,高級なものでね,20本で800円もするんだよ。」
「800÷20=40円! へえー。そんなにするんですか。」
「今では昔のように手作りでクロモジ楊枝を作っているという人は,日本に一人しかいなくてね,東京の日本橋というところに,『さるや』という専門店があってね,そこのお店の人しか作っていないということなんだよ。」
「へえー。そうなんですか。」
「モンタ博士も初めて行ってみたけどね,それはそれは,超高級な楊枝がたくさんあったね。写真を見てもらうと分かるかな。」
「植物にはいろいろな香りがあり,それを利用した日本人はとってもえらいですね。他に何か香りのする植物というのはないのですか。」
「そうだね。モンタ博士が教えるのはかんたんだけど,それでは勉強にならないね。
そうだ。花ちゃんとオー君の二人でいろいろと調べてごらん。いろいろなことが分かって楽しいと思うよ。」
「よーし。しっかりと調べます。まかせておいてください。さあ,花ちゃんいっしょに調べよう!」
ということで,二人で調べて以下のようにまとめたとさ・・・
「香りやにおいは,個人的な好き嫌いもあると思うけど,一応まとめました。」
「二人でいろいろ考えて,??系としたんですが,どうですか。」
「いいね。??系とはおもしろい。名前や呼び方などいろいろあってもいいね。」
花ちゃん・オー君の自由研究! 植物の香り・においについて
No |
どんなかおり・におい |
植物名など |
1 |
いい香り系 いいにおい系 |
スイカズラ,キンモクセイ,ノイバラ,ヒイラギ,クチナシ,ユリ,スズラン,ウメ,ライラック,フリージアなど
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2 |
柑橘系
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ミカン,レモン,グレープフルーツ,キンカン,ユズ,レモンタイム,レモングラス,ゲッキツなど
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3 |
シソ・ハーブ系
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ローズマリー,ラベンダー,イブキジャコウソウ,スイートバジル,ミント,シソなど
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4 |
シナモン・芳香系
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シナモン,クロモジ,ゲッケイジュ,クスノキなど
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5 |
フィトンチッド系
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ヒノキ,マツ,モミ,ヒバ,ブルーアイスなど
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6 |
ネギ系 |
ネギ,タマネギ,ニンニク,ニラ,ハナニラ,ノビルなど
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7 |
メンソール系
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ミズメ,ネコシデ,シラタマノキ,オレガノなど
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8 |
早春系
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セリ,フキノトウ,ジンチョウゲ,スイセン,ロウバイなど
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9 |
上品系
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マツタケ,ビャクダン,イエライシャンなど
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10 |
アロマ系
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シダーウッド,プルメリア,ジャスミン,ゲットウなど
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11 |
毒消し系
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ワサビ,ショウガ,サンショウなど
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12 |
ウコギ系
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タラの芽,コシアブラなど
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13 |
甘い綿菓子の香り系
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カツラ(マルトール系)
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14 |
バナナ系 |
カラタネオガタマ |
15 |
草もち系
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ヨモギ |
16 |
フキ系 |
フキ,フキノトウ |
17 |
ウンチ系 |
イチョウ(ギンナン):へプタン酸・酪酸系・腐敗臭系
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18 |
嫌な臭い系
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ヘクソカズラ,クサギ,コクサギ,ドクダミ,トベラなど
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日本で唯一残る楊枝専門店(日本橋さるや)
江戸時代に創業し,現在は9代目のご主人が切り盛りしているそうです。丈夫で香りの良いクロモジの木を用いた楊枝は,日本でたった一人の職人さんによるものだそうです。日本に世界に唯一つだけの楊枝専門店です。店内の写真撮影を許可されたので,以下参照
してください。
なお,お店の人のお話では,千葉県に工場があるそうです。その場で機械で作る楊枝と全てを手作業で行う場合があり,価格にも違いがあります。参考までにお値段ですが,機械作成の物は200本で1000円で,手作りの物は,20本で800円です。
最後にクロモジなど楊枝の値段比較
手作り 20本 800円 1本あたり 40円
機械 200本 1000円 1本あたり 5円
ヒャッキン 800本 100円 1本あたり0.125円=12銭5厘