2.植物の世界
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(11)おいしい植物の世界
(12)野菜・果物も植物だ! おどろきの世界
(556)モミジイチゴ
「モンタ博士,これまでいろいろな果物や野菜についてお話ししてくれましたね。どれもとっても楽しくてためになりました。私は,もっともっと知りたくなりました。」
「ぼくも同じです。今まであまり気がつかなかったけど,ぼくたちは,いろいろな植物を食べているんですね。ご飯も,パンも,おかずだって植物ですね。」
「そうだね。植物は食べるだけじゃなくて,着るものだって植物だよ。綿からコットンを作るし,それから,住んでいる家だって木がなければ建たないね。」
「そういうのを,むずかしい言葉で,衣・食・住というのですね。ところで,私がどうしても知りたいくだものがあるんですが・・・何だか分かりますか。ヒントは数字です。」
「うーん。数字? あ! 分かった。1と5でイチゴだろう。」
「ピンポーン。そのとおり。イチゴです。私が知りたいのはイチゴです。」
「イチゴか。ふーむ。こまったな。イチゴといってもいろいろあるよね。」
「イチゴのことなら,ぼくにまかせてください。ふつうにお店で売ってるイチゴ。これはストロベリーというやつなんだ。でも,ところがどっこい,イチゴというのは,まだまだいろいろあるんだ。特に,野生のイチゴもいろいろとおいしいイチゴがあるんだ。」
「あ,そうか。二人ともあちこちの遠足などで,野山に自然に生えているイチゴも食べたことがあったんだね。どれが一番おいしかったかな。」
「えーと。オー君が五感を使って観察したところ,一番おいしいイチゴは,モミジイチゴかな。フユイチゴもとってもおいしいね。他に,クサイチゴもいい味をしていたね。」
モミジイチゴ
フユイチゴ
クサイチゴ
「さずがはオー君。食べることはよく覚えているわね。感心しちゃうわ。」
「ところで,ふつうにみんなが食べているイチゴを何というか知ってるかな。」
「イチゴはイチゴだと思いますが・・・。」
「ショートケーキの上にあるのは,オランダイチゴ属のオランダイチゴというんだよ。そして,野山などでよく見かけるイチゴはキイチゴ属というものが多いのさ。」
「同じイチゴでもちがうようですね。」
「そうだよ。それでは,赤い大きなイチゴを考えてごらん。ふつうのイチゴだよ。みんなどこを食べているか分かるかな。では,イチゴのまわりをよく見てごらん。何か気がついたかな。」
「イチゴのまわりには,小さなつぶつぶがならんでいますね。」
「そうなんだ。この小さなつぶは種子であり,果実でもあるんだよ。」
「それじゃ,ぼくたちがいつも食べる赤い色のところはいったい何なの。」
「それは,花とくらべてみるとよく分かるよ。」
「これは,イチゴの花をたてに切ったところですね。」
「そうだよ。がくとかおしべとかあるんだ。そして,まん中の小さなふくらみのところにたくさんのめしべが見えるだろう。この小さなふくらみは花が終わったあとに大きくなって,そこをおいしいといって食べているのさ。」
「モミジイチゴの実とはどうちがうのですか。」
「モミジイチゴなどのキチチゴは,花がすんでもふくらみが大きくならないのさ。表面には水気の多い果実がびっしりとついて,全体がボールのようになるんだよ。」
「それじゃ,オランダイチゴの黒いつぶつぶと,モミジイチゴのあまずっぱくて,ジューシーな一つ一つのものは両方とも実ということで同じなの。」
「そのとおり。同じイチゴでも食べてておいしいなと思うところは,まったくちがうというわけさ。オランダイチゴは花の台の部分が大きくなったところがうまくて,モミジイチゴは一つ一つの実がおいしいということなんだよ。」
「へえー。そうなんだ。またまたお勉強になったところで,みんなでおいしくイチゴを食べましょう。」
オランダイチゴ属(Fragaria)とキイチゴ属(Rubus)について
オランダイチゴのように花の台(花托という)が大きくなったものでは高山に生えるシロバナノヘビイチゴやノウゴウイチゴなどがある。また,ヘビイチゴも同じ仲間で,これらをオランダイチゴ属という。この属はがくが10枚あるのも特徴である。
モミジイチゴなどをキイチゴ属といい,がくは5枚が特徴である。フユイチゴやクサイチゴ,ナワシロイチゴ,ラズベリー,ブラックベリーなどは全てキイチゴ属。なお,ストロベリーといえばイチゴであるが,ブルーベリーやクランベリーは,ツツジ科スノキ属である。まあ難しいことは言わないで,ジューシーで美味しければベリーベリーハッピーということにしよう。