1.身近な自然の観察
(4)生物と日本人のかかわり
2.植物の世界
(1)花のつくりとはたらき
(3)被子植物(双子葉類)のなかま
(543)日本ラグビーとヤマザクラ
「ねえねえ,花ちゃん。ラグビーワールドカップ見た?」
「見た見た! かっこよかったね。ノックオンとか,ノーサイドとか,ラグビーのルールも分かってほんとうに楽しかったわ。」
「日本代表も準々決勝で惜しくも負けてしまったけど,それまでの4連勝はすごかったね。おみごとだったね。ラグビーの楽しさを教えてくれたね。」
「日本中がラグビーブームになったわね。」
「ぼくは,今度,ラグビーのトップリーグの試合を見に行くんだ。楽しみなんだ。それからさ,あの日本チームの赤と白のユニホームもよかったね。」
「サクラのエンブレムもすてきでしたね。」
「ブレイブ・ブロッサムズ,つまり,『勇敢な桜たち』という意味なんでしょ。」
「オー君は,くわしいですね。」
「サクラの絵がかいてあったけど,あれはソメイヨシノなんでしょ。」
「くわしくは分からないけど・・・どうだったかな。確かめてみればいいね。あ! これは,ソメイヨシノではないわ。ヤマザクラだわ。」
「え! ソメイヨシノではないの。ヤマザクラというのもあるの。」
「ヤマザクラというのは,昔から日本にあったサクラで,花が咲くと同時に,葉も開く種類なのよ。くわしくはモンタ博士に聞こうよ。」
「そうしよう,そうしよう。」
「ワールドカップのお話だね。モンタ博士も見て感動したね。日本選手がトライした時には,モンタ博士もおうちでトライのまねをしたくらいだよ。」
「ところで,ワールドカップラグビーの桜のエンブレムは,ヤマザクラですね。」
ヤマザクラ
「よく気が付いたね。あのね,みんなは『花札』というカード遊びを知っているかな。」
「名前を聞いたことはありますが,自分でやったことはありません。」
「その花札の桜も,咲き乱れるサクラの花のあちこちに葉っぱがかかれているんだよ。」
「ぼくたちがよく見ているソメイヨシノとは,どうちがうのですか。」
「ソメイヨシノというのはね,江戸時代の終わりごろ,今の豊島区駒込の染井村という所で,品種改良されたものなんだよ。」
ソメイヨシノ
「どうして,ソメイヨシノは人気があるのですか。」
「ソメイヨシノは,葉よりも先に花が咲くだろう。たくさん咲いて空をおおいつくすように一面に咲くので,人気があり全国的に植えられているんだよ。」
「どうやって増やしていったのですか。」
「ソメイヨシノはね,さし木や接ぎ木という方法で増やしたのさ。そうすれば,スピードアップして苗木を育てることができるからいいんだよ。」
「それは親とまったく同じ特徴をもった分身ということですね。つまり,クローンということですね。」
「クローンなんて言葉を知っているなんて感心だね。人間の世界ではクローンというとSFの物語みたいだけど,植物の世界では,かんたんにクローンができるんだね。」
「ということは,元はみんな同じということですね。」
「そうだね。だから,同じ時期にいっせいに咲いて,いっせいに花が散るということなんだよ。」
「桜前線なんていう言葉もありますね。」
「そうだね。気温にしたがって南から順番にサクラの花が咲いていくのも,全国の桜の木が同じ性質をもったクローンだから可能ということなんだ。ワールドカップラグビーのおかげで,サクラについてもお勉強できてよかったね。」
本居宣長とヤマザクラ
江戸時代の国学者であった本居宣長は特に山桜を愛した人物として知られ,有名な「敷島の 大和心を人問はば 朝日に匂ふ山桜花」(原文通り)と詠んでいます。若い頃から山桜が好きだったらしく,庭に植えたり,死んだら自分の墓に山桜を植えてくれと言ったり,そんな遺言を残したそうである。山桜は,必ず花と葉が一緒に出るもので,染井吉野とその生態が違うようです。
全国の90パーセントが染井吉野で,山桜は,雑木林や山に行かないと見ることができない日本自生の桜です。なぜ,小学校の校庭にたくさんの染井吉野が植えてあるかというと,それは,育てやすく,文部省が後押ししたというお話まであるそうです。「匂う」という言葉もむずかしい言葉ですが,これは,もともと「色が染まる」といったり,「照り輝く」といったりする意味があります。山桜の花に朝日が差した時には,いかにも「匂う」という感じになるのでしょう。