東書キッズ

２．植物（しょくぶつ）の世界（せかい）
　（3）被子植物（ひししょくぶつ）（双子葉類（そうしようるい））のなかま

（485）ハナミズキの花（はな）

「ねえ，オー君（くん）。土曜日（どようび）・日曜日（にちようび）はとても寒（さむ）かったわね。」

「そうだね。おいら，寒（さむ）くてダウンベストを出（だ）して着（き）ちゃったよ。」

「でも，寒（さむ）くてもおうちの中（なか）にいてもつまらないし，てくてくしてきたよ。」

「え！モンタ博士（はかせ）！私（わたし）たちを置（お）いて，どっかにお出（で）かけしちゃったんですか。」

「モンタ博士（はかせ）！一人（ひとり）でお出（で）かけしちゃいけないよ。おいらたちも連（つ）れてってよ。」

「ごめん，ごめん。今度（こんど）はいっしょに行（い）こうね。」

「ところで，モンタ博士（はかせ）！どこをてくてくしてきたの。」

「玉川上水（たまがわじょうすい）という所（ところ）さ。やわらかな緑（みどり）の林（はやし）が帯（おび）のようにつらなっていて，ちょっと寒（さむ）かったけど，とても気（き）持（も）ちよかったよ。やさしい緑の色（いろ）合（あ）いのトンネルをてくてくしてきたんだ。」

「いろいろなお花（はな）が咲（さ）いていましたか。」

「いろいろな虫（むし）もいましたか。」

「そうだね。お花（はな）は咲（さ）いていたけど，虫（むし）は寒（さむ）かったせいか，少（すく）なかったね。本当（ほんとう）は，国立（くにたち）をてくてくしたかったんだけど。友達（ともだち）が玉川（たまがわ）上水（じょうすい）を案内（あんない）してくれといったのでね･･･。」

「あーあ。おいらも行（い）きたかったな。」

「まあ，そんなに遠（とお）くに行（い）かなくても，まわりをあちこち見（み）てごらん。わくわくドキドキはいっぱいあるよ。」

「でも，サクラは終（お）わったし。」

「それじゃ，ちょっと来（き）て。」

　ということで，モンタ博士（はかせ）は，花（はな）ちゃんとオー君（くん）を連（つ）れて，学校（がっこう）の門（もん）（先生（せんせい）たちの入（はい）る門（もん））の所（ところ）までてくてくして，西側（にしがわ）を指（ゆび）さし･･･。

「さあ！よーく見（み）てごらん。道（みち）の両側（りょうがわ）にお花（はな）が咲（さ）いているね。ハナミズキの街路樹（がいろじゅ）だ。ハナミズキ通（どお）りと名（な）付（づ）けようかなあ。」

「ハナミズキがいっぱいできれいですね。今（いま）まであまり気（き）がつかなかったわ。」

「ハナミズキ･･･。何（なに）か歌（うた）の題名（だいめい）にあったような気（き）もするなあ。」

「さあ，よーく見（み）てごらん。緑（みどり）色（いろ）がとてもやさしい感（かん）じがするだろう。それに，純白（じゅんぱく）の花（はな）がとてもステキで，モンタ博士（はかせ）も好（す）きな木（き）だよ。」

「ふーむ。きれいな花（はな）だけど，白（しろ）い花は緑（みどり）の葉（は）っぱのおかげでよく目（め）立（だ）つね。」

「え！オー君（くん）。今（いま）なんていったの。オー君は，今，とてもすごいことに気（き）がついているんだよ。」

緑（みどり）と安（やす）らぎ感（かん）について

　人（ひと）は自然（しぜん）に安（やす）らぎを求（もと）めるものだ。品田（しなだ）穣（ゆたか）氏（し）の著書（ちょしょ）『ヒトと緑（みどり）の空間（くうかん）』によると，安らぎ感（かん）の主役（しゅやく）は木（き）や草（くさ）の緑（みどり）だという。視界（しかい）に入（はい）る緑の量（りょう）が多（おお）ければ多いほど，人々（ひとびと）の安らぎ感が増（ま）すということが調査（ちょうさ）で確（たし）かめられている。
　昔（むかし）の人（ひと）はよく，「緑（みどり）を見（み）ると目（め）が休（やす）まる」といったものだ。読書（どくしょ）や針仕事（はりしごと）に疲（つか）れると，庭（にわ）の木々（きぎ）に目をやり，目の疲れを癒（いや）し，心（こころ）を休めた。緑の量（りょう）と安（やす）らぎ感（かん）とは正（せい）比（ひ）例（れい）の関（かん）係（けい）にあるようだ。
　東大（とうだい）の吉田（よしだ）尚（なお）貴（き）氏（し），武蔵野（むさしの）美大（びだい）の立花（たちばな）直美（なおみ）氏は，街路樹（がいろじゅ）の緑（みどり）が多（おお）ければ多いほど安（やす）らぎ感（かん）が増（ま）すと報告（ほうこく）している。つまり，視界（しかい）の中（なか）の緑の量（りょう）が30％（パーセント）以下（いか）になると安らぎ感が失（うしな）われ殺（さつ）伐（ばつ）とした風（ふう）景（けい）になるそうだ。人（じん）類（るい）はもともと目（め）を使（つか）って緑を見（み）つけ，緑を食（た）べる動（どう）物（ぶつ）として進（しん）化（か）した。だから人（にん）間（げん）の目には，自然（しぜん）の緑がもっともよく見えるような構（こう）造（ぞう）が組（く）み込（こ）まれているのかもしれない。自然の緑に適応（てきおう）するようにつくられているのだろう。緑が目の薬（くすり）になる秘密（ひみつ）はこのへんにあるのかもしれないなあ。