1.身近な自然の観察
(4)生物と日本人のかかわり
(417)学名について 1
「あれあれ? だれだろう?」
「この二人はね,1年生のMさんとEさんだよ。大きな葉っぱを見つけた! といって,モンタ博士に見せに来てくれたんだよ。うれしいね! これからも,おもしろいなあと思ったり,不思議だなと感じたものをいろいろどんどん持っておいで! モンタ博士は待ってるよ。」
「それにしても大きな葉っぱですね。顔がかくれてしまいますね。ところで,この葉っぱは,何という植物の葉っぱですか。」
「これは,プラタナスですね。」
「ピンポーン,そのとおり。さすがは花ちゃん! では,和名は,何というか知っているかな。」
「スズカケノキですね。名前は,鈴のような実をぶら下げるからですね。」
「さすが花ちゃん。感心感心だね。」
「なんですか。その和名とか・・・?」
「和名というのは,日本語の名前だよ。学名というのもあってね,植物や昆虫などにつける科学的で学術的な名前で,ラテン語(イタリア語の古語で現在は使われていない)で書かれているんだ。」
「何だか難しそうなお話ですね・・・。」
「そんなことないよ。それでは,今からモンタ博士の『ラテン語教室』だ。」
「え! 『ラテン語教室』?」
「アロミリナ ディコトーマ(Allomyrina dichotoma)とは,カブトムシのことなんだ。それから,パピリオ クセウツス(Papilio xuthus)とは,アゲハチョウさ。プルヌス ムメ(Prunus mume)とは,ウメのことさ。」
「へえー。覚えられないです。モンタ博士。もっと簡単なのはないのですか。」
「あのね,チューリップもコスモスも本当は,ラテン語で学名なんだよ。」
「サルビアもヒヤシンス,クロッカス,シクラメンもみんな学名ですね。」
「へえー,そうなんだ。ラテン語って身近なところにいっぱいあるんですね。」
「そうだよ。外国から来た植物などは,ラテン語のままの名前になっているものがいっぱいあるんだよ。クレマチス,カンナ,グラジオラス,ダリア,ベゴニア,カトレア,プリムラ,ハイビスカス,シンビジゥーム,ハイドランジァー,アスチルベ,アイリス,リコリスなどなど,まだまだ他にもあるよ。」
「へえー。いっぱいあるんですね。よし! ぼくもこれからは,ラテン語をたくさんお勉強しまーす。」
学名について
その昔,ヨーロッパ列強の国々が,植民地を広げようと世界各地に進出していた頃。西洋の人々は,次々に発見され持ち込まれる見たこともない様々なものに驚きの目で見たことであろう。それは,動植物に対しても例外ではなかった。彼らはそれらをこぞって収集し,新種として名前を付けていった。博物学の時代の始まりである。ところが,何か新しい種類を見つけると,それぞれに名前を付けたが,様々な国では言語も違い,混乱が生じた。そこで,リンネという人が,国際的に共通な名前として二名法(『種』というものは,『属』と『種』の2つによって表す)という方法で,『学名』というものを考案したのである。カブトムシは,Allomyrina属のdichotoma種ということになる。コスモスとかサルビアなどは,正しくはそれぞれCosmos bipinnatus,Salvia splendensというのである。つまり,現在は,属名をそのまま植物の名前として用いているのだ。属名は,学者によって見解の相違があり,カブトムシはAllomyrinaではなく,Trypoxylus を用いる場合もあるようだ。なお,シクラメンの和名は,『ぶたのまんじゅう』というのであるが,やはりシクラメンはシクラメンでいいと思う。何故なら,『シクラメンのかほり』の歌詞が ♪『真綿色した ぶたのまんじゅうほど 清しいものはない♪ では・・・? ね。