1.身近な自然の観察
(5)自然観察・実験のてびき
5.各学年の授業実践・地域活動
(6)6年生・移動教室
(366)高尾山の遠足
「琵琶滝コースの森には,『常緑樹』の木がいっぱいでした。」
「カシやシイ,ツバキやヒイラギなど,緑色がこい葉が多かったです。」
「森のふんいきは,少し暗い感じがしましたね。」
「それに比べると,4号路コースの森は,『落葉樹』の木が目だちました。」
「イヌブナやカエデ,シデやサクラなどの種類の木がありました。」
「落葉樹の葉っぱは,緑がうすくて,明るい感じでした。」
「高尾山は,北側と南側では森のようすがちがうということが分かりました。高尾山には,まだまだ他にもいろいろなコースがあるそうで,歩いてみたいです。」
「森といっても,いろいろな森があることを知り,勉強になりました。」
「まわりを見たり,葉っぱをさわたり,スケッチしたり,いろいろなアクティビティがあって,楽しい山登りができたと思います。また高尾山に来たいです。」
「遠足や移動教室での自然観察の意味を小論文にまとめたので紹介します。」
子供の感性を培うための理科学習 ~自然環境を生かした体験学習を通して~
1 はじめに
近年,子供の理科離れや自然体験不足が叫ばれて久しい。生物分野の学習においては,地域に見られる自然も減少してきており,実際に体験することができず,どうしても図鑑や写真映像などに頼ってしまうという傾向が見られる。そして,本来わくわくどきどきするような楽しい理科学習の授業が思うように実践できない状況がある。
理科学習は,自然に親しみ観察・実験を行い,自然の,物とのふれあいを通し,自然を愛する心情を育てるという目標がある。また,自然に目を向け,自然の事物・現象の規則性について気付き,科学的な見方や考え方を養うことも重要な目標である。そして,このような理科学習を通して,子供たちは感性を育てる機会に恵まれるのである。そこで大切なことは,実物にふれることである。特に生物分野では,この直接体験を大切に扱っていきたい。木の香り,草のにおい,虫にふれた時の感触など,本物だからこその愕きや発見があり,感動が生まれ感性が高められるのである。
学習過程において,「考えること」も大切な学習活動であるが,本来,考える作業は,頭の中で語彙の意味を理解し,それを活用し知識を広め理解を深めるものである。しかし,小学校時代の子供には,むしろ「感じる心」を耕し,感性を高める機会をより多くもつことの方が重要であると考える。
特に生物分野での学習では,野外での動植物とのふれあう場面も多く,頭で考える作業だけでなく,実際に見る・さわる・においをかぐ・耳をすますなどの感覚器官を活用した観察法や実験法を大いに取り入れていくことが大切であるといえる。そして,感性を高める教育といっても,感覚器官を訓練することから始めることであり,子供が自分自身の五感を大いに活用できるような学習計画をプランニングしていくことが必要である。
以下,具体的な学習活動を展開する上での課題や対応策,また,実践事例などの詳細を記すことにする。
2 野外での理科学習活動での課題と実践事例
(1)安全に対する配慮
野外では予期せぬ事故が発生する可能性があるので,十分な配慮や対策・準備をしなければならない。まず,担任一人では目が行き届かない場合があるので,学年やブロックなど複数で指導する体制をとらなければならない。また,指導者の確保のために,保護者や地域の方,ボランティアの協力を得ることも大切なことである。
野外での活動を考える場合,事前の危険箇所の確認はもちろん,子供の体力やコースなどに配慮し余裕のある計画を立てることを心がけるべきである。
(2)学習意欲の喚起とその継続
野外での活動では,目の前に様々な事象があり,子供の学習に対しての興味・関心や集中力が散漫となり,学習意欲が低下し,十分な成果が得られない場合が多い。そこで大切なことは,あまり欲張らずに,観察ポイントやエリアを限定することである。例えば遠足などで,全行程のほんの一部でよい,ねらいをもった活動をさせることである。また,理科学習の内容のみならず,五感を活用した自然体験の楽しさを加味した内容にすることも考えていきたい。見る・さわる・においをかぐ・耳をすますなどの直接体験の活動を工夫して取り入れることにより,子供たちは驚きや感動をもち,学習に前向きになり,意欲的な展開となるのである。
(3)遠足や移動教室の活用
学校の近くに豊かな自然がなく,理科学習に役立つような素材が見つけにくく,学習の場の確保ができない場合などは,遠足や移動教室などの機会を大いに利用していくべきである。移動教室でのハイキングを実施する学校は多いが,その場の理科的素材を十分に活用していない現状がある。日光の戦場ヶ原等でハイキングする学校があるが,子供たちは,ただ歩かされていたり,先を急いで競争するように歩く子供たちをよく見かける。これでは,貴重な自然を前にしても感動や喜びなどは味わうことができない。そこで,その場の自然を意図的計画的に教材化し,学習カードなどを工夫し,体験的な活動を存分に行わせることが必要である。
(4)学習カードの工夫
日光移動教室での本校の取組について,その詳細を記すことにする。まず,戦場ヶ原の湯ノ湖より小田代ヶ原・赤沼までをハイキングするが,学習カードを用いての活動では,湯ノ湖より泉門池までとした。これを「グリーンクイズゾーン」とした。その他,雄大な男体山や広大な戦場ヶ原周辺を「てくてくぶらぶらソーン」「ゆったりながめゾーン」とした。ここで以下,グリーンクイズゾーンでの活動を紹介する。
① 葉っぱシルエットクイズ・・・事前に葉の形をコピーしたものを用意し,絵合わせをしながら植物の多様性に気づきながら植物名を当てていく。
② 巨木目測クイズ・・・大きなミズナラの樹高や胸高円周を当てる活動を通して,貴重な奥日光の自然を感じる。
③ 自然タッチクイズ・・・森の中でいろいろな樹木の木肌にふれたり,コケや地衣類などの感触を楽しむ。また,森に入って地面に立ちジャンプして遊びながら,コンクリートとは違った感触を楽しむ。
④ 耳をすましてクイズ・・・森の中で目を閉じて耳の感覚を働かせる活動をしながら,川のせせらぎや小鳥のさえずり,風の音を感じていく。
⑤ 木の香り・草のにおいクイズ・・・事前に特徴のある植物のにおいをかいだり,連想するものを記したりさせる。また,深呼吸させ,森の空気を味わう活動なども行う。
⑥ お気に入りコーナー・・・気に入った植物や動物などを見つけ,ベスト3などを決めたりする。
その他,ポイントを決めて3分間スケッチや距離当てクイズ,俳句チャレンジタイム,ベスト3景セレクトなど,様々な活動が考えられる。
3 まとめ
生物界の特徴として,生き物には多様性があり,自然界ではそれらが複雑に絡み合っている。それを全て教師が知ること,教えることは不可能である。大切なことは,教えることではなく,子供自身に気づかせる,何かを感じさせることである。レイチェル・カーソンの言葉にも「自然の不思議さや神秘さに目を見張る子供たちの感性を保つためには,それを一緒になって再発見し,感動を分かち合う大人が少なくとも一人,子供のとなりにいなくてはならない」とあるように。