1.身近な自然の観察
(1)昆虫と植物
4.自然界のつりあい・環境保全・地質と地形の世界
(3)自然環境の保全
(323)花いっぱいの学校になあれ!
「上の2枚の写真は,2,3年前の国立七小の校庭ですね。」
「下の2枚の写真は,今の校庭ですね。花がいっぱいになって,花ちゃんはとってもうれしいです。」
「まだまだだよ。みんなでもっともっと花いっぱいの学校にしよう。この前の入学式で,この花壇の前でたくさんの家族が記念撮影していたね。うれしかったね。花があることはとてもすばらしいことなんだね。」
「わたしも見ました。ピカピカのランドセルを背負った1年生が,とてもうれしそうな顔をしていましたね。花があるとあったかい感じでいいですね。」
「あれあれ? 上の2枚の写真をよく見ると,どちらも土が掘られた感じですね。」
「さすが! よく気がついたね。これはね,かたい土を4年生のSさんのお父さんにユンボという大きなシャベルのような機械で掘ってもらったんだよ。」
「へえー。そうだったんだ。」
「それから,5年生のK君のお父さんからたくさん土をもらって入れたんだよ。」
「へえー。そうなんだ。ところで,次の写真は何をやっているのですか。」
「みんなは知らないかもしれないね。お兄さんたちがやっているのはね,リヤカーで運んだ土を入れて,花壇を作っているのさ。」
「へえー。すごいね。りっぱなお兄さんたちですね。」
「本当にそのとおりだね。ところで,次の写真を見てごらん。ナノハナに並んで写っているね。」
「みんな,とてもステキでニコニコ顔ですね。」
「そうだね。お花には,人を笑顔にする力があるんだ。お花には,人を優しくさせる力があるんだ。お花って,とっても不思議なもんだね。」
花の不思議・・・
花の不思議ということについて,形態・生理等,自然科学的な観点ではなく,少し大げさであるが,文化人類学的に考察してみたいと思う。花というものをよくよく深く考えてみると,まったくもって不思議なものであることに気付く。誕生日と言えば花を用意し,お祝い事には花は欠かせない。また,愛の告白や病気のお見舞い等にも花を添えるものである。お別れにも花をあげる。これは,今までのたくさんのあふれる感謝の思いを花に託して伝えるという効果があるからだと思う。人生の最期にも花いっぱいにして見送るし,人が亡くなってからも,花を供えて故人を偲ぶ。窓辺に花があるだけで,そこが急にパッとはなやかに明るくなり,癒しの空間になってくれる。花にはものすごい力があるようだ。
ところで,物事を考えるのに縦軸と横軸で見ることが大切であると常々考えている。縦軸とは時間の流れであり,古今の歴史的な見方である。横軸とは,空間的に平面的な見方であり,地球的世界・世界的な広がりをもって見ることともいえる。そのような見方・考え方で花について考えてみると,昔から人は花をとても大切にしてきたと思う。人は大昔から上記のような様々な花の効用を感じており,自然発生的に花を利用してきたのだろう。それはいつの時代からなのかはわからない。しかし,人間が人間らしく進化・成長してきた中で獲得してきた一つの優れた特性であると私は思う。いくら人間にもっとも近いと言われる霊長類でも,花をもって愛を伝えているチンパンジーは見たことがない。そのように考えてみると,花を愛する感情というものは,人間が人間としてあるべき本源的な大切な必須の条件でもあるようにも思う。花いっぱいの世界がたくさんになればなるほど,より人間的な感情の高まりや,優しさにあふれた世界になると考える。次に横軸で見ていくと,地球のどこの国でも花を大切に扱ってきていると感じる。様々な国々で花をモチーフにした詩歌や絵画があり,芸術の世界にも花は大活躍している。人間の肌の色には関係がなく,花は愛されているように思う。高緯度で花の少ない地域でも,万物躍動する春には,花はその存在感を主張するのである。花には不思議な力があるものだ。