3.動物の世界
(11)その他の無脊椎動物のなかま
(307)コウガイビル その2
「あれあれ? 何だろう。ミミズみたいだな。」
「ミミズにしては,頭の形がちがうよ。何かの生き物みたいだよ。」
「ぼくが見つけたんだ。学校に来るとちゅう,石がきのすきまのところでつかまえたんだ。」
「モンタ博士に聞いてみよう。モンタ博士! このなぞの生き物は何ですか。」
「これは,コウガイビルという生き物だよ。色が黒いので正しくは,クロイロコウガイビルというものなんだ。」
「ヒルというと,人間の血を吸ったりするあのヒルのなかまですか。」
「血を吸ったりするヒルとはまったくちがう生き物だよ。人間には害がなくて,ミミズやナメクジなどを食べているおとなしい生き物なんだ。それにしても,よく見つけて,よく持ってきてくれたね。どうもありがとう。」
「そんなにすごい生き物なのですか。」
「そうではなくて,ちょっと見るとへんなかっこうしているし,気持ち悪いと思って目をそむけてしまいたくなるけど,0君は不思議に思って持ってきてくれたんだね。それがすばらしいね。りっぱだ。感心してしまうね。」
「0君! よく見つけたね。すごいね。」
「まあ,それほどでもないけど。見たことも聞いたこともないから,どんな生き物なのかと思って持ってきたんです。このコウガイビルというのは,何のなかまなのですか。」
「いい質問だね。生き物はたとえ名前が分からなくても,何のなかまなのかを知ることが大切なんだ。このコウガイビルは体が平べったいので,扁形動物といって,プラナリアなどと同じなかまなんだ。」
「プラナリア? 聞いたことのない生き物だな。」
「ヒルやミミズ,ナメクジとはちがう生き物ということですね。」
「ヒルやミミズは体が丸っこいので,環形動物といい,ナメクジはカタツムリや貝のなかまで,軟体動物というんだよ。」
「へえー。そうなんですか。」
「大切なことは,このコウガイビルを発見することによって,他の生き物のようすなど,自分でいろいろと興味と関心をもって,自分で好奇心をもって学んでいくことだね。『知るは楽しみ』というから,いろいろと本も読んでみよう。」
「はい,分かりました。これからもいろいろな生き物を探します。」
「ところで,このコウガイビルという生き物だけど,ちょっと変わったというか,おもしろい生態があるんだよ。」
「生態? あまり聞かない言葉ですね。」
「生態とは,動物や植物が自然の中で生活するありさまのことだね。」
「分かりやすくいうと,どういうことですか。」
「それはね,コウガイビルは体を切られてばらばらになっても,そのうちに再生するということなんだ。モンタ博士も実験したことはないけど,とてもおもしろい生態だね。へんな虫は,すごい虫というわけだね。」
「再生というのは,体を切っても,そのうちまた同じような形になるということですね。なんだか不思議な生き物なんですね。」
「そうだね。不思議がいっぱいって,ほんとうに楽しいね。」
コウガイビルとは
コウガイビルは,陸上の湿ったところに生息する動物で,頭部は半月形をしている。名前のコウガイとは,昔の女性の日本髪などの髪飾りである笄と頭部の形が似ているので,この名前がついた。環形動物のヒルに比べて筋肉や神経系の発達が劣るため,運動はゆっくりとしており,ゆっくりと這い動くだけである。日本に数種以上が生息しているとされるが,詳細は不明であり,あまり研究の進んでいない分野の生き物かもしれない。ほとんどが海産または淡水産であり,陸上生活のものはこのなかま以外にはほとんどない。このごろ,都会を中心に,外来種であるオオミスジコウガイビルという大型の種が侵入してきている。