3.動物の世界
(8)クモのなかま
(300)クモの網
「ねえねえ,夏休みの自由研究は何にするかもう決めた?」
「う~ん,まだ考え中。『自由研究』っていうのに,“やらない自由”はないんだよね・・・,トホホ。」
「おやおや,もうすぐ夏休みだというのに浮かない顔をして。今の時代は自由研究のヒントを集めた本やそのまま使える教材キット,インターネットの情報などたくさんあるじゃないですか。」
「だから困るんです。いろいろあって迷うし,お友達とかぶったらいやだし・・・。」
「はいはい。“テーマも何もかも自由”っていう研究は,小学生の今しかできないことかも知れないよ。学者や研究者は,指導する先生や所属機関の専門分野しか研究させてもらえないからね。個人プレーじゃなくてチームで動くことが多いし,研究費用を出すスポンサーが指定してくることも。」
「ふだんこの『てくてく』で見てきたように,いろいろなことに興味をもって,子供ならではの柔軟な見方をするといいね。家の人にも協力してもらおう。」
「では私のおすすめ。身近で観察しやすくてしかも友達がやらないような・・・。」
「えっ,これクモの巣ですか?」【写真・矢印がクモ】
「夕方,せっせと巣を作っているところを見かけますね。なるほど,その様子を研究するんですね。」
「そう。これは谷保駅で撮ったオニグモの仲間。ホームの蛍光灯【写真の白い部分】に来る虫がめあてなんだね。正式には巣じゃなくて網と呼ぶよ。例えば,「1日コース」網ができるまでを記録する。「1週間コース」網を張る時刻と天候や気温との関係を調べる。もし取り組むなら,安全な場所で大人といっしょにね。」
「いろいろな種類のクモの網を調べてもおもしろそうですね。」
「ちょっと気持ち悪いし,怖いっていうか,待ち伏せする性格?も暗~い感じ。」
「そうだね。どうしても見た目がねぇ。どうやらヒトには“足の数が多すぎても少なすぎてもだめ”という感覚があるみたい。」【本や図鑑を示しながら】
「クモは8本足で,昆虫は6本足ですよね。」
「昆虫とはちがう進化をしたんだね。自力で飛ぶ代わりに,糸を使って空間に進出していった。」
「これは網の標本写真ですね。ちょっときれいかも! レース飾りみたい。」
「女性の研究者が考えた方法だよ。白いラッカーをクモの網にスプレーし,ボール紙を当てて張り付けるんだそうだ。興味があれば検索してみよう。」
「クモの糸は細くて丈夫,意外なところで活躍しているんだよ。例えば望遠鏡や銃などの照準器(ファインダー)にある十字線。」
「へぇ,何だかクモってすごいや! でも毒グモもいるんでしょう?」
「どのクモでも,基本かまれたら痛いし,餌の昆虫に注射する毒はもっています。直接さわらなければ大丈夫だと思うよ。今,外来種の『ヒアリ』が話題になっているけれど,『セアカゴケグモ』*も忘れないでね。」
「注意を呼びかけるパンフレットを見ると・・・,プランターの底,エアコン室外機の裏,庭に置いた靴の中・・・,不規則な網を張り,メスのお腹に赤いダイヤマーク・・・。」
「近くの三鷹市では,マンションの植え込みや公園で発見されたよ。もし見つけたら,すぐ市役所などに大人から知らせてもらおう。安全な夏休みをすごしましょう!」