1.身近な自然の観察
(3)季節と生物
3.動物の世界
(7)ハチ・チョウ・ガ以外のなかま
(290)スズムシ差しあげます!
「梅雨の季節・・・蒸し蒸しますね。」
「『蒸し』と『虫』は関係あるかもね。これを見て。」(プラケースを見せる)
「うわ~っ! 何だかいっぱい虫がいるぅ~!!」
「はい。このゴマつぶみたいなのはスズムシの幼虫です。」
「どうやってこんなにたくさんつかまえたんですか?」
「つかまえたんじゃなくて,去年産んだ卵を取っておいて,そこから孵化(卵がかえること)したんだよ。最初はお店で買ったけど,こうして毎年毎年飼っているんだ。」
「これ,全部育てたら,秋には “♪リーン リーン”って,やかましく鳴きますね。」
「いや,この分だと7月後半から夏休みにかけて羽化(成虫になること)して,秋にはもう死んじゃうと思う。」
「日本では昔,こういう鳴く虫をお侍さんが家で養殖していたそうだよ。」
「えっ! 武士が虫マニアだったんですか?」
「趣味じゃなくて仕事。『武士は食わねど高楊枝』。苦しい家計を助けるための内職だったそうだ。侍が育てた鳴く虫を,行商の人が売り歩いたんだ。」
「金魚の養殖をして品種改良したお侍さんもいたんだよ。」
「昔の日本なら,いくらでも虫がいそうなのに,わざわざ買う人がいたのね。」
「虫の声を聴く文化があるんですね。」
「季節を感じる風物詩のひとつなんだね。さて,そこでサンショウウオに続いて『スズムシを育ててみませんか』のお誘いです!」
「昆虫の育ち方は3年生が理科で学習しますよね。」
「スズムシを育てるのは大変ですか?」
「初心者でも大丈夫。しかも私のように,産卵させて孵化した幼虫を育てる累代飼育もしやすい。飼い方は多くの図鑑や本に出ているよ。」
「え~と,餌は,キュウリやリンゴ,カツオブシやニボシ・・・,あれれ肉食なんですか?」
「雑食です。タンパク質をとらないと共食いしちゃう。私は金魚の餌をあげてますよ。リンゴは皮や芯で十分。カビが生えないうちに取り替えます。」
「うっ。サンショウウオみたいにまた共食い・・・。でも,お互いピョンピョン跳ね回るから,つかまらないんじゃないですか?」
「鋭い! でも昆虫には動けない時があるんだ。そのときにやられちゃう。」
「脱皮の瞬間ですね!『止まる場所や隠れ家を用意する。』って書いてあるわ。あと,『乾燥に弱いので霧吹きで湿らせる。(虫にかからないようにする)』ですって。むずかしそう。」
「私はジグザグに折った紙を立てています。霧吹きの代わりに,水をしみこませたティッシュを容器の隅に置いています。スズムシマットとか餌のゼリーも市販されているけれど,お金をかけずに手間と愛情をかけてほしいな。」
「ぼくも飼ってみようかな。」
「今回は里親じゃないから,学校にもどさなくていいです。じっくり観察してください。下のきまり(省略)をお家の人とよく読んで,相談してください。」