3.動物の世界
(3)脊椎動物のなかま
(287)トウキョウサンショウウオの里親の実施報告
(容器ごと持ってきて心配そうに)「私の家のトウキョウサンショウウオ,ひっくり返っちゃったんです! 大丈夫かしら?」
「ははぁ,おなかにガスが溜まったんだね。餌やりをひかえてようすをみよう。」
「学校のも育っているけど,花ちゃんのはずいぶん大きいね。」
「毎日,たくさん餌をあげているからだね。水替えもしてあげてね。」
「あと,口から泡を出すんですけど・・・,これは何ですか?」
「鰓がなくなった後,息を吸って肺で呼吸する練習をしているみたいだよ。」
「上陸したら,里親はおしまいにしてまた学校にもどすんですね。」
「ピンセットから餌を食べるかわいいサンちゃん・・・,鰓がなくなると,急に知らんぷりしてなつかなくなります(涙)。そのまま飼い続けることもできるけれど,上陸後の暮らし方はよく分かっていないのと,夏の高温に注意が必要なので,かなりむずかしいよ。里山へ返すのはモンタ博士にお願いします!」
「はいはい。卵があった元のすみかの方へ逃がしてくるよ。そこは時々イノシシも出て来るんだ。」
「えぇっ! すごく自然がいっぱいなんですね! トウキョウサンショウウオは『絶滅危惧種』でめずらしい生き物なんでしょう?」
「今は『絶滅危惧Ⅱ類』というランクだそうだよ。詳しくは調べてもらうとして,住んでいる場所が減ってきたせいだね。おそらく昔は谷保のあたりにもいたんじゃないかな?」
(新聞紙を1枚ずつ渡しながら)「ではお二人さん,ちょっと試してみようか。その新聞紙の中から『夢』という文字を探してごらん。」(二人懸命に探す)
「え~っと・・・見つからないわ・・・。あっ! 裏の広告の所にありました!」
「う~ん,ぼくのには無いなあ(ショボン)。」
「なかなか見つからないよね。実はどの新聞紙にも出ている文字があるんだ。」
「何だろう? 句読点 『,。』ですか?」
「ひらがなのどれか?」
「正解は数字の『2』と『年月日』。上の方に日付があるでしょう。今年は西暦2017年・平成29年だから,数字の『2』は必ず載っているよ。」
「とんちクイズみたい・・・,サンちゃんとどんな関係があるんですか?」
「新聞紙が生き物の住む自然だとすると,少ない枚数では見つからない文字,つまり生き物もいるっていうこと。逆に『2』は普通種で,どこにでもいる生き物というわけ。」
「なるほど。新聞紙1か月分の束をすみずみまで探せば,色々な文字=生き物が見つかるでしょうね。」
「そうだよ。自然のふところが広く,豊かだということがサンショウウオみたいな生き物には大事なんだね。」
「今の国立は新聞紙の枚数=自然が少ない,という例え話なんですね。」
サンショウウオの成長=「水温×日数」?
昆虫や魚,こういう変温動物では,「ある範囲内で温度が高い方が成長も早くなる」きまりがあり,その関係を数式化して積算温度と呼ぶ(農業用語とは他の定義)。
例えば,仮に「サンちゃんが孵化してから鰓がなくなるまでの積算温度は1000℃日」という場合,水温20℃なら50日間,25℃だと40日間になる(50℃で20日間・・・ゆだって死んでしまうから無理)。もちろん,餌の与え方など飼育条件により多少の違いはある。
5年理科で学ぶメダカは,「産卵から孵化まで250℃日」とされ,よく数式があてはまる。こうしたことは多くの人の飼育・観察経験,データの集積で解明されていく。