3.動物の世界
(5)ハチのなかま
(268)ハチのひみつの世界 18 「ミツバチ(2)」
「これは,ミツバチを
育てて
飼っている
所ですね。」
「そうだよ。モンタ博士のおうちの近くの雑木林で,どこかのだれかが養蜂をしている写真なんだ。」
「どのくらいあったのですか。」
「そうだね,10箱くらいだったかな。ミツバチはごらんのように木でできた巣箱の中にいるんだよ。野原で蜜と花粉を集めたはたらきバチが次々と飛び立っては,もどってくるんだよ。」
「でも,この写真,ちょっと変ですね。」
「そうだね。気がついたかな。まわりの木を見ると,葉っぱを落としているだろう。これはね,3月ごろの写真なんだ。」
「それじゃ,他のハチと同じように,ねむっているのですか。」
「そうではないんだ。数は少ないけど,ハチたちは,この箱の中で冬をこしているんだよ。これは,他のハチとミツバチの大きなちがいでもあるね。」
「もう少し近くで見たいですね。入り口はあるのかな。どうなってるのかな。」
「さあ! ようこそミツバチ王国へ。」
「たくさんいるんですね。」
「何か気がつくことはありませんか。」
「全部で10ぴきいますね。手前はこっちむいているけど,巣の入り口近くのは,なんだか,おしりをこちらに向けているようですね。」
「よく気がついたね。おしりを向けているのは,門番役のはたらきバチなんだ。」
「そうか。巣の入り口にいて,よそ者や敵をふせいでいるのですね。」
「そうだよ。触角でにおいをかいで,同じ巣のなかまなら通すけど,そうでないときには,武器である毒針でさすんだ。」
「へえー,えらいんですね。よくがんばりますね。ところで,この巣箱の中にはどのくらいのミツバチがいるんですか。」
「
約2
万びきのミツバチがいるらしいよ。
巣箱の
中には,
写真のような
巣板というのがあって,1
枚の巣板には2
千びきくらいいるんだ。」
「ずいぶんとたくさんいるんですね。それで,その巣板で何をしているのですか。」
「そうだ。いい質問だね。この巣板で,花の蜜をハチミツにするんだよ。」
「え! 花の蜜=ハチミツではないんですか。」
「そうだ。またいい質問だ。花の蜜は,ミツバチのえさになるハチミツとは別なんだ。ミツバチは,花の蜜を原料として,ハチミツを作るのさ。」
「どうやって作るのですか。」
「巣の中で花の蜜を受け取ったはたらきバチは,蜜胃にためた花の蜜を,何度も口にもどし,水分を蒸発させるんだ。この時,糖分(あまさの度合い)は40%ほどなんだ。」
「40%ではどうしてだめなんですか。」
「この濃さではね,巣にためていてもくさってしまうのさ。もっと水分をとばさないとだめなんだ。」
「かんたんにはハチミツはできないんですね。」
「そうだよ。何度もミツバチの体の中を通り,酵素などの作用をうけ熟成され,糖分が80%くらいのハチミツにするんだ。そして,この時,はたらきバチが分泌した抗生物質というものもふくまれることにより,いつまでもくさることなくためることができるのさ。」
「ふーん,すごいんですね。ところで,1年間にどのくらいのハチミツができるんですか。」
「ある資料によると,一つの巣で,60kgもできるそうだよ。」
スプーン一杯のハチミツを作るためには?
スプーン一杯10gのハチミツを作るには,その倍の20gの花の蜜が必要だといわれています。20gの花の蜜を集めるには,1回の蜜集めで250個の花を訪れ40mg集めるわけですから,500回の蜜集め作業をすることになります。一匹のミツバチが1日に10回くらいの蜜集めをするわけですから,50日くらいかかることになります。しかし,ミツバチの成虫はそんなに長生きができません。多くて40日くらいで,蜜を採れるのは,成虫の20日くらいなわけですから,約2匹のミツバチが一生をかけて集めたものがスプーン一杯の計算になります。どのくらいの花に訪れるかを計算すると,少なくとも10万個の花が必要になります。