2.植物の世界
(4) 被子植物(単子葉類 )のなかま
(244)ガマはソーセージのような形?
「うわあっ! 何だこりゃ? とてもおもしろい形だな。」
「不思議なものですね。ソーセージみたいですね。」
「色が黄色やオレンジ,水色だったらアイスキャンデーみたいにも見えるね。」
「何だか植物みたいだけど・・・。あ! ひょっとしてこれは,『ガマ』という植物ですか。わたし,初めて見るわ。」
「そのとおり。これが有名な昔話の『因幡の白うさぎ』に出てくる『ガマの穂』といわれるものだよ。ガマは漢字で『蒲』と書くんだ。」
「変わった植物ですね。ソーセージやアイスキャンデーみたいに見えますね。」
「そうだね。昔の人もいろいろな食べ物を連想したらしいよ。鉾のように見えるガマの穂先は『かまぼこ』と言われていたんだよ。かまぼこの語源はここからきているんだよ。」
「でも,変ですね。かまぼこって板にくっついているような,板に盛られているようなものですよね。」
「ところがどっこい。昔は,かまぼこはちくわと同じように,棒のまわりに盛られていたんだ。だから,かまぼこは,漢字で書くと『蒲鉾』なんだ。」
「なーるほど。そういうことなんですか。」
「さらに,食べ物のお話を続けるけど,ウナギのかば焼きというものがあるだろう。あれもガマからきているんだ。今では,ウナギは開いて焼くけども,昔は筒切りにして,そのまま棒にさして焼いていたんだよ。その形もガマの穂にそっくりだったんだ。それで,かば焼きも漢字で書くと『蒲焼き』で,蒲の文字があるんだ。」
「食べ物のお話ばかりになってしまいますね。モンタ博士。」
「ごめんごめん。それでは食べ物ではなくて,このガマを『キツネのろうそく』と呼ぶ地域もあるそうだ。ガマの穂をアルコールなどにひたして火をつけたりしたらしい。さらに,よく見るとガマの穂はたくさんの綿毛みたいに見えるだろう。だから,ふとんに入れたらしい。それで,ふとんも漢字で書くと『蒲団』になるんだ。」
「『蒲鉾』『蒲焼き』『蒲団』というのは分かりました。ところで,そもそもそのガマの穂というものは何なんですか。植物のどの部分なのですか。」
「そうだね。それでは,ガマの穂を真っ二つに切ってみようか。エイ! ヤア! ・・・と。」
「うわあ! 何だこりゃ?」
「これは,たてに切ったのですね。」
「そうだよ。学校にある大きなカッターで,『エイっ!』とやったら,二つに切れたんだ。」
「大きさがよく分かるように,定規が置いてあるんですね。」
「切る前の様子が分かるように,もとの形のガマもありますね。」
「もしゃもしゃした綿のようなものもありますね。」
「よく気がついたね。その前に,ガマの花のつくりについてお話しするね。まず,ガマの穂は雌花で,無数のとても小さい花がぎっしりとつまった形をしているんだ。」
「雌花というのは,メスの花ですね。オスの花はどこにあるの。」
「いい質問だね。穂の上につき出た串のような部分が雄花なんだよ。オスは花粉を飛ばしやすいように上についているんだ。メスはそれを受け止めやすいように下にあるということさ。」
「ふーん。なるほど,うまくできているのですね。」
「ところで,ここでクイズにするよ。たくさんあるように見えるガマの種は,一本の穂の中にどのくらいあるのでしょうか。」
「そうですね。1,000個くらいですか。」
「いや,もっと多いと思うな。そうだ! 10,000個くらいかな。」
「ブブー! 二人とも残念でした。ガマの穂には,およそ350,000個もの種が入っているといわれているんだ。」
「すごい数ですね。おどろきですね。」
「あんなに小さな花の中に350,000個の花が咲き,350,000個の種を宿すわけだね。小さな穂の中に,350,000もの命の営みがあるということなんですね。」
「350,000個といっても,何だか想像がつかないな。」
「そうだね。そういうときは,人口の数で考えてみようじゃないか。さて,国立市の人口はどのくらいか知っているかな。」
「たしか,70,000人くらいだったかな。もう少し多いかな。」
「そうだね。くわしい数字は分からないけど,たしか75,000人を超しているね。つまり,国立市の人たちの5倍くらいの数の命があるということさ。」
「でも,不思議だな。どうしてそんなにたくさんの種を作る必要があるんだろう。」
「これまたいい質問だね。こんなにたくさんの種を作るということは,それだけ,エネルギーを使うということだね。だから,ガマの花は,花びらもがくもつけずに,ただオシベとメシベだけのとてもシンプルな構造になってしまったんだろうね。」
「ガマはすきまなく種を作り,皆でよりそい,力を合わせているんだ。」
「そうだ。地球には70億の人が暮らしている。皆で仲良くしなくちゃね。」