1.身近な自然の観察
(4)生物と日本人のかかわり
3.動物の世界
(9)カニ・エビのなかま
(210)「ちりめんモンスター」って知っている?
「見て見て,フッタ博士! おみそ汁のアサリの中にこんなカニがいたよ!」
「あっ,私も見たことあるわ。知らずに貝を食べると,口の中がジャリジャリしちゃうの。」
「よく気づいたね。これは二枚貝のからの中にすむ『カクレガニ』だよ。『ピンノ』ともよぶんだ。小さいけれどこれが成体(大人)で,貝のえさや栄養をもらい『寄生』をしながら生きている。今は『パラサイト』のほうが分かるかな。貝がらで守られているから,目は退化しているし,こうらもぶよぶよしてやわらかい。」
「どうやって貝の中に入るんですか? はさみでこじ開けるには弱そうだし・・・。」
「貝がねている間にこっそりすき間から入るとか?」
「ピンノの生活は分からないことだらけ。おそらく子ガニの時に貝の入水管から入り,種類により決まった貝にすみつくんじゃないかな。カキにつくピンノもいる。」
「じゃあ,一つの貝に何びきもいることもあるのかしら?」
「それもナゾ。同時にオス・メス2ひき見つかることもあるらしいけど,1ぴきしか育たないようだね。オスはメスのいる貝をさがして歩くという説もある。」
「オスはかくれがから出てさがすわけ? 危険だなぁ。男はつらいよ・・・。」
「またまた,それを言う。カニがいたら貝はめいわくじゃないのかしら?」
「そうだね。貝はカニに栄養を取られてやせてしまうこともある。それでも追い出されずにすみ続けるひけつがあるんだろうね。」
「カニの子どもはプランクトンなんですか? プランクトンってミジンコやアメーバみたいな,けんびきょうで見るような小さい生き物でしょ。」
「昆虫と同じように,脱皮しながらカニも変態していくんだ。たまごからゾエア→メガロパという,ちがう形をした子ども時代をすごす。エビも変わっていく。真水に住むサワガニやザリガニはたまごの中でそうした時期をすごして,いきなり親のミニチュアで生まれてくる。ピンノは貝の中でたまごをうみ,出水管から海に出してもらう。ちょっとこれを見てごらん。」
「ちりめんじゃこですね。ごはんにのせて食べるの大すき!」
「ちりめんじゃこ【写真左】やしらすはイワシなどの子どもだね。よくさがすといろいろな海の生き物が見つかるよ。タコの子もいるよ【上】。とげがあるのが何かのカニのゾエア【中】,ややカニらしくなったのがメガロパ【中下】。エビかアミの仲間【右】もいたよ。海の流れに乗って遠くまで旅をするんだね。【目もりは1mm】」
「栄養士さんがこういうのを集めて『ちりめんモンスター』って呼んでいたよ。フッタ博士! 昆虫とエビ・カニは親せきどうしなんでしょう?」
「節足動物という大きいグループだね。ムカデやクモ,ミジンコもそうなんだ。昆虫は地球上のありとあらゆる所でくらしているけれど,なぜか海の中にはいないんだ。エビやカニの天下なんだよ。それから,光の全くとどかない深~い海の底,火山がふき出す養分でくらしているカニもいるんだよ。自然の世界にはふしぎなことがいっぱいだね。」