2.植物の世界
(5)裸子植物のなかま
(167)与謝野晶子とイチョウ
「あ! この黄色い葉っぱは,イチョウですね。」
「イチョウといえば,国語の時間にお勉強した与謝野晶子の
「金色の 小さき鳥の かたちして
いちょう散るなり 夕日の丘に」
という和歌がありましたね。」
「そうだね。名作だね。与謝野晶子は社会科の教科書にも出てくるね。」
「モンタ博士,イチョウというのは,サクラと同じように,みんなによく知られていて,とてもなじみ深い植物ですね。でも,どうしてかな。」
「それはたぶん,秋も深まって,すみ切った青空に,木々の中でもひときわあざやかな黄色に色づくからだろうね。」
「モンタ博士,イチョウというのは昔から日本にあった木なんですか。」
「日本にはなくてね,もともとは中国原産のものなんだよ。」
「ふーん,そうなんですか。」
「だから,日本の野山にはなくて,植えられたものさ。自然にはないんだね。それでも,日本の秋にはなくてはならない存在となっているね。」
「イチョウの葉っぱって,サクラやモミジなど,ふつうの葉っぱとちがうね。」
「二人ともいいところに気がついたね。イチョウという木はね,とても古い木でね。恐竜の生きていたころから,ずうっと生き続けている木なんだよ。」
「古いっていうけど,それは,大昔からあったということですね。」
「そのとおりだよ。地球が誕生してから,初めての植物が見られるようになったのが,6~7億年前。イチョウは古生代で,約3億年前くらいからあるんだよ。」
「へえー? 植物にも新しいものと,古いものがあるなんて知らなかったわ。」
「マツやスギなども古い植物なんだ。おぼえる必要はないけど,むずかしい言葉で裸子植物(らししょくぶつ―種がむきだしになっている植物)といってね,中生代のジュラ紀あたりには,地球上は裸子植物ばっかりだったんだ。裸子植物というのは,赤や黄色などあまりきれいな花はさかないのさ。」
「それじゃ,きれいなお花がさくような植物はいつごろ出てくるの。」
「中生代の白亜紀ごろ,つまり1億年前くらいから裸子植物だけでなくて,被子植物(ひししょくぶつ―種は果実の中にある植物)も出てきたのさ。」
「虫キチのおいらには,あまり関係ないお話だな。」
「そんなことないんだ。被子植物が出てきてから,きれいな花びらやみつや花粉を持った植物が出てきたことは,昆虫がばくはつてきに種類をふやすことに関係するんだよ。つまりね,植物も虫もいっしょに進化してきているというわけさ。」
イチョウのつぶやき
私たちイチョウは植物系統発生学的にいうと,とても古い植物でーす。葉脈が二股状に分枝していくのは,古い植物の特徴でもあるの。シダ植物の葉脈も二股状ですよ。私たちはオスの木とメスの木があって,メスにはあの強烈なにおいのするギンナンをならせます。ギンナンを手で触るとかぶれるけど,それは,ギンナンのなかにあるギンコール酸とビロボールを含んでいるからなのよ。でも,味は最高でしょ。